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2013年2月 Archive
五輪開催の意義
- 2013年2月26日 16:46
- M.N氏の岡目八目
2020年以降のオリンピックからレスリングがなくなるかもしれない。
国際オリンピック委員会(IOC)の理事会は五輪の「中核競技」から
レスリングを除外した。残った1枠を野球、ソフトボールなど7競技と
争うことになったというから、状況は厳しい。
五輪種目の入れ替えは、そう珍しいことではない。時代とともに
変化していくことは当然だが、紀元前から続く「人類最古のスポーツ」を
外す理由がよく分からない。IOCによると、世界的な普及度や
テレビ放送、スポンサー収入などを分析した結果という。
国際レスリング連盟の組織改革の遅れも指摘されているが、
あまりのも唐突すぎると思う。
五輪3連覇の吉田沙保里選手は「信じられない。悔しい」と
コメントしているが、当然だろう。五輪を目指す選手や子どもたちの
ショックは大きいと思う。「近代オリンピックの父」クーベルタンは
五輪開催の意義を、こう提唱している。「フェアプレーの精神をもって
理解しあうことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」と。
五輪の商業化がいわれて久しい。だから、テレビ映りがよく、
スポンサー収入も集めやすい競技を増すというのは安易すぎる。
変化を急ぐあまり、理念を忘れるようでは本末転倒だ。IOCは、
そのことを理解してもらいたい。
人生の密度
- 2013年2月21日 14:50
- M.N氏の岡目八目
黒いネクタイを締めるたびに、限りある人生を考えさせられる。
過日、友人の葬儀が営まれた。突然の死はいまだに信じられない。
いつも励まされ、何もお返しできなかったと悔やんでいる。
人生八十年と言われて久しいが、どこかで他人事と受け止めている。
欧米型の食生活にどっぷりつかり、車での移動に頼り切る彼には
高いハードルだったと映るからだ。やはり粗食に耐え、体を
動かしてきた先輩たちにはかなわない。永遠の別れを重ねて
深まっていく、人生のはかなさへの思いだ。ある食品工業の社長は
「百年カレンダーを」を使って社員に「はかなさ」を説いて
いられるそうだ。百年分の暦が並んだ大きな紙を前に「一枚の紙に
君も、私の命日も入る。われわれは一枚の紙に住んでいる仲間だ」
と語り掛ける。若い社員でもあっても、どこかに見えない命日が
潜んでいる。
そんな気付きは、一度限りのはかない人生だからこそ
どう生きるかにつながる。その上で「忘己利他」(もうこりた)の
大切さを説く。自分さえよければでなく、他人のために何かをする。
小さな実践でいい。その積み重ねが自分の幸せになっていくのだと。
友人の遺影を見つめ、日々の仕事に精いっぱい打ち込んだ姿が
浮かんできた。人生は長さでなく密度が大切。いつもの人懐こい
笑顔で論された気がした。
巨大隕石
- 2013年2月19日 08:56
- M.N氏の岡目八目
すざましい閃光(せんこう)だった。動画サイトを見て身震いした。
隕石(いんせき)が人類を襲う、映画の世界がロシアで現実になった。
願い事を託せる流れ星なら歓迎するが、宇宙からの贈り物
にしては物騒すぎる。
地球には幾千もの隕石が落下する。大半は人目に触れない場所に
落ちるらしい。大規模なものは、1908年にシベリア上空で大爆発した
隕石か彗星(すいせい)と見られる落下物が知られる。
今回はそれ以来の大きさだそうだ。広島型原爆20個分のエネルギーが
衝撃波として放出されたという。建物の損壊が激しく、負傷者は
1200人余に上る。死者の情報がないのは幸いだった。
古人にとって宇宙は神の領域だったらしい。隕石を天上からの
授かり物と考えていたのだろうか。霊験を信じ寺社にまつり、
碑を建てた。最古の記録は861年に落下した直方(のうがた)隕石
(福岡)だそうだ。国内最大の隕石は1850年の気仙隕石(岩手)で
135キロあったという。『歴史を揺るがした星星』恒星社厚生閣)参照
人類は長く宇宙に飛び出す術(すべ)を知らなかった。
月に降り立ち半世紀足らずだ。宇宙科学は急速に進歩しているが、
なお未知の闇が広がる。昨日は直径45メートルの小惑星が
地球に最接近した。大型の小惑星や隕石は事前に軌道を把握できる。
だが小さな落下物は予測できず対処が難しいという。
歯がゆいばかりだ。
深遠なる宇宙の前に、いかに人間はちっぽけで非力な生命体であるか、
思い知らされる。被害者は気の毒だが、古人なら紛争や諍(いさか)い
の事の絶えない地球への警告、と受け止めるか。
師弟関係
- 2013年2月12日 13:02
- M.N氏の岡目八目
柔道女子トップ選手への暴力問題をきっかけに、
日本のスポーツ界で「選手と指導者の在り方」が問い直されている。
重いテーマだなと思っていた折、「いい話」が聞こえてきた。
競泳男子平泳ぎの北島康介選手が、かって師事した平井伯昌
コーチの下で練習し現役を続行するという。「水泳人生を
締めくくるには、もう一度平井先生に指導してもらいた」。
弟子からうれしい声のプレゼントが届けられた。
平井コーチの教えを請うため海外からも有力選手が来る。
選手は技術の取得に集中する。そこに暴力の入り込む余地はない。
感情を制御できず、選手に暴言を吐き、手を出す。コーチの
力不足を露呈しているようなものだ。「情熱」の継続は
根気のいる作業でもある。
かってのプロ野球選手で、巨人の荒川博、王貞治両氏の
師弟関係は有名だ。打者に転向して力を発揮できない王選手に、
荒川コーチは「一本足打法」を挑戦させる。ひたすらバットを振る。
思いを共有することで困難を乗り越えた。
体操男子のアテネ五輪団体総合金メダリスト、塚原直也選手は
旧ソ連の元エース、故ニコライ・アンドリアノフ氏に8年間、教わった。
「知恵のあるコーチ」に出会ったことが幸運だったと話した。
「知恵」とは多彩な指導の引き出しを持つことだと思う。
マスクが手放せない
- 2013年2月12日 12:59
- M.N氏の岡目八目
毎年春になると、遠く中国からやって来るのが「黄砂」だ。
関東地区でも4月下旬から5月上旬にかけての数日は、
黄砂現象が見られ、洗濯物や車を汚すなどの被害も出る。
ところが今年は、その季節を待たずに、厄介なものが
中国から飛んできている。大気汚染物質が、風に乗って
日本にまで飛んできているのだ。
問題は、肺がんやぜんそくを引き起こす可能性があると
される微小粒子状物質「PM2,5」が含まれていること。
福岡市では今年に入り、環境基準値を上回PM2,5の数値を
3日間観測されたそうだ。環境省では日本に飛来するまでに
濃度は薄まっており、「健康への影響が出るレベルではない」
とするものの、やはり不安は募る。空中を漂う汚染物質は、
航空機や船のように追い払うことができない。
元を断つのが一番だが、経済発展を最優先させる中国にとって、
環境悪化を食い止める方針に急激に舵を取るのは難しいだろう。
とはいえ、中国の経済発展のツケを回されるのだけは
願い下げたいものだ。粒子は小さくて通常のマスクを通り抜けるため、
効果はないとされる。ただ、インフルエンザの流行、大気汚染物質
の飛来、花粉の季節が続くとなれば、しばらくはマスクが手放せない。
孫への教育資金
- 2013年2月 6日 08:48
- M.N氏の岡目八目
昭和を代表する作家の一人に吉川英治作家がいる。
代表作は「宮本武蔵」や「三国志」「新・平家物語」など。
これらを原作とした映画やテレビドラマは数多い。
工場勤めだった若い頃、彼の元に母親から小包が届いたそうだ。
中を開けてみると欲しかった本と一緒に、刻みタバコがあった。
愛煙家だった息子のため、夜な夜な針仕事を続けては、
お金をため、やっとの思いで買いそろえたに違いない。
その優しい心に触れた息子は、胸が熱くなり泣いた。
以来、彼は小包を結わえてあった母の赤い腰ひもを
肌身離さず身に着けた。苦労しながらも独学を続けた
吉川英治作家は、やがて文化勲章の受章作家となった。
扇谷正造著「君よ朝のこない夜はない」(講談社)にあった逸話だ。
その昔は、親たちが汗水を流して働き、子供たちの教育資金を
工面した。青雲の志を抱き、地方から都会の大学などに進むと、
なおさら学資もかさんだ。大作家が晩年になっても語った
赤い腰ひもではないが、故郷からの仕送りは何物にも代え難いものだった。
政府・与党は新たな税制改正大綱案を固めたようだ。この中では
祖父母が孫に教育資金を一括して贈与する場合、1人当たり
1500万まで非課税とする方針。高齢者の資産を若い世代に
移すことで、消費を促す狙いらしい。
「シックスポケット」なる言葉がある。今の子供には両親のほか、
父方母方の祖父母を加えた六つの経済的な財布を指す。
税改正で今後は四つの財布からも教育支援が増えるとすれば、
そのありがたみをどう子に伝えたらいいのか、それも親の務めとなる。
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