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2010年10月 Archive

チリの落盤事故

チリの落盤事故で、33人の作業員全員が生還して10日余。
世紀の救出劇を全世界が生中継で伝えたが、チリ本国はともかく、
わが国などでは、報道ぶりもようやく落ち着きを取り戻してきた。

時間の経過とともに、69日間に及ぶ坑内での
人間模様なども漏れ聞こえてくるようになった。
中には作業員や家族たちにとって、
あまり触れてほしくないものもあるようだ。

地下700メートルの過酷な環境で生き抜いた作業員たちである。
何があったとしても不思議ではない。
心理学者や精神科医らが彼らの心理と行動を分析するのは
必要であるにしても、部外者が興味本位に見ることだけは控えたい。

気になるのは作業員たちのこれからの人生設計だ。
事故前の貧しくともつつましやかな暮らしに戻ることはもうできまい。
海外への招待旅行、多額の謝礼を伴う講演や執筆依頼など。
映画化もされるそうだ。望むと望まないにかかわず、
彼らは英雄になってしまった。

能力ある者には最高のチャンスであっても、全員がそうとは限らない。
同じ鉱山で働く同僚たちからは「おれも閉じ込められたかった」
との声も聞かれる。救出された作業員の間にも、
やがて嫉妬や不平不満が出てくるかもしれない。

南半球のチリではこれから夏に向かう。
その夏が過ぎるころ、作業員たちの生活はどう変わっているのだろうか。
それぞれの新しい人生が穏やかで幸せなものであることを祈りたい。

(M.N)

運鈍根

ビジネスの世界では「運鈍根(うんどんこん)」が大切だとよくいわれる。
幸運も成功の重要な要素だが才気走ってあれこれ目移りしないこと、
根気よく継続することも必要という意味だ。

科学の世界でも似た言い方をするそうだ。
ノーベル化学賞を受賞した北海道大学名誉教授の鈴木章さんが
テレビのインタビューに答え「セレンディピティ」という言葉を使われていた。
偶然に幸運な予想外の発見をする能力のことだ。

偶然ではあるが、単なる「棚からぼたもち」ではない。
普段から徹底して考え抜いていることが前提。
歴代受賞者の発見の逸話からも、決して狙い通りだったのではなく、
目の前で何が起こっているか虚心坦懐(たんかい)に洞察した結果、
成功につながったことがうかがえる。

鈴木名誉教授は「重箱の隅をほじくるような研究ではなく、
新しい誰もやっていないような研究をしろ」
と学生たちに言っていられるそうだ。
恐らく自身の研究姿勢でもあるのだろう。

ほとんどの人が役に立たないと考えた物質に
目を付けて実験を重ね、ついに鈴木カップリングという
有機化合物の合成法を発見。それが思いがけず
工業製品に広く応用されていった。
鈴木名誉教授は「非常にラッキーだった」と振り返る。
 
今回化学賞を受賞されたもう一人の日本人で
米パデュー大学特別教授の根岸英一さんは「究極の楽天家」
と自己分析れている。
あきらめず幸運を待ち受ける心性こそ大事ということか。
実際には幸運の種が眼前に現れても
やり過ごしてしまうことがどれだけあるだろう。

(M.N)

高齢ドライバー標識

「枯れ葉のようでお年寄りに失礼だ」などと不評だった
高齢ドライバー標識の「もみじマーク」。
それが幸せの象徴である四つ葉のクローバーのデザインに
一新されるようだ。

色も従来の黄色と茶色の2色に黄緑と緑の2色が加わり、
4色になる。もみじマークに比べると、随分明るくなり
これなら「お年寄りに失礼だ」といった批判も出ないだろう。

70歳以上のお年寄りを対象に、年内にも使用が始まる見通しだが、
現在のもみじマークも当分使えるようにするという。
車に四つ葉のクローバーを張る高齢ドライバーが増えれば、
事故の減少にも少しは期待が持てそうだ。

全国で交通事故死者は減っているのに、
70歳以上の死者は減らない。
昨年は高齢者の死者が全体の4割を超えた。
ドライバーの高齢化が、それだけ進んでいるのだろう。
普通自動車免許を持つ70歳以上の高齢者は全国に約620万人。
過去5年間で180万人増えているそうだ。

四つ葉のクローバーを車に張るだけでなく、
歩行者も夜間に反射材を身に着けるなどの対策が必要なようだ。
いくらもみじマークが四つ葉のクローバーに変わっても、
事故が減らなければ「幸せ」は訪れない。

(M.N)

クールビズからウォームビズ

4ヶ月ぶりだった。今月10日、
久しぶりに手に取り、身に着けてみた。
ちょっと首元が苦しいけれど、逆に身が引き締まる思いがする。
新入社員のような新鮮な気持ちもしてくるから不思議だった。
ネクタイである。

「クールビズ」のおかげで、ごぶさたしていた。
夏の軽装は今年が初めてではなかったが、
記録的な猛暑だっただけに、
今夏ほどネクタイなしのありがたみを感じた年はない。
冷房を使う時間は抑えることができたし、何処のオフィスでも
おそらく仕事の能率も上がっていたのだと思う。

環境省の提供で始まった「クールビズ」は今年で6年目。
室温の高いオフィスでも快適に過ごせる
ファッションとして広まった。自治体や会社でも導入例が増え、
いまや男性の夏場のノーネクタイ、ノー上着は当たり前。
すっかり定着したように思える。
 
だが、単に服装だけでなく、こうした環境を考えた行動を、
家庭を含む生活すべてに広げるのが本旨なのだと思う。
環境省のホームページでは、その一つとして、
窓辺を草花で覆って室温を下げる「緑のカーテン」の例が
紹介されている。川崎市長室の窓辺にもゴーヤでの
緑のカーテンが見えた。

月日は進み、今度は「ウォームビズ」の季節がやってくる。
重ね着などで冬の暖房を抑える狙いだ。
今冬はいつも以上に、家屋の暖気運転を減らしたり、
日中は部屋に日光を取り入れるといった、
身の回りの無駄を廃する心掛けをしたい。
ノーネクタイと同様に心地よい生活が待っているかもしれない。

(M.N)

世界ゴルフ殿堂

プロゴルフ界のいまや”;御大”と言うべき尾崎将司選手の
世界ゴルフ殿堂入りが先に決定した。
1970年のプロ入りから40年。ジャンボの愛称で
ゴルフというスポーツを日本に定着させた最大の功労者に
あらためて光が当てられた。

遅ればせながらーというのがぴったりの感がする。
日本選手としては、2003年の樋口久子さん、
04年の青木功さん、05年の岡本綾子さんに次ぐ栄誉だが、
国内ツアー94勝、海外1勝を含むプロ通算113勝、
生涯獲得賞金26億8000万円余は他をまったく寄せ付けない
ずばぬけた成績だ。

坂田ジュニアゴルフ塾で知られる坂田信弘さんが語ったことがある。
「尾崎ほど己のゴルフに頑固な男はいない。海外に挑戦するのは
マスターズと全米オープンのみで、それも日本のゲームの組み立て方を
変えなかった。常にドライバーを持ちコースに向かって
大上段に構えていったのだ」

ゴルフは2016年のリオデジャネイロ五輪で正式種目に採用された。
世界各地に活躍する選手がいなければ決して五輪種目にならなかった。
日本にこだわり、日本を愛した選手がいたからこそ
日本にゴルフが定着した。ゴルフ殿堂がそういう尾崎選手を
評価してくれたことがうれしい。

(M.N)

スポーツの秋

気持ちに体がついていかない。
キャッチボールでボールをとろうと身を乗り出せば足がもつれる。
年齢とともにわが身がもどかしく、運動するのもおっくうになる。

それに引き換え、クルム伊達公子さんはどういうことか。
引き合いに出すには恐れ多いが、先日の女子テニス国際大会での
機敏な動きには目を見張った。40歳の誕生日に
世界ランキングで格上の若い選手と堂々の戦いぶり。
前回の優勝者ら2人も下している。

26歳でプロを引退し、11年の空白期間をおいて37歳で復帰した。
日本選手で初めてトップ10に入った実力とはいえ、
伊達さんが活躍したのは1990年代前半。
いまは力とスピードの時代に変わっている。
追いつくには並外れた精神力と努力が要ったろう。

テニスは若さだけではない。かっては勝つことだけに
没頭したけれど、いまは相手の精神面や技術を分析しながら
楽しんで試合ができるようになったといわれる。
伊達さんは20代との違いを、こう自著に記されている。
今度の対戦でも緩急を交えて相手を惑わせる技が光った。

復帰は「テニスが好き」という自分の気持ちに
正直になれたから、といわれる。周囲の目を気にして
ためらっていたのを、ドイツ人のご主人が押し出している。
伊達さんからは、人それぞれに年相応の
チャレンジの仕方があると教えられ、勇気づけられた。
プールで週1回体を鍛えているが、
年齢や体力を言い訳にせずに体を動かすとしよう。
いい時節の到来である。

(M.N)

国勢調査

10月最初の週末は、黒鉛筆片手に
国勢調査の調査票と向き合った。
住宅の面積や、仕事の詳しい内容まで記入しなくてはならず、
戸惑いもあった。しかし5年に1度の国勢調査は、
日本に住むすべての人が対象となり、報告を拒んだり虚偽の報告を
した場合の罰則も定められている。
 
20の調査項目は、政治・行政を始め、
あらゆる社会経済の分析に利用される。
調査員は平成17年のときで約83万人、
調査票の枚数は約7700万枚、重ねると
富士山の約3倍にも達するという。
それほど大掛かりな調査だ。

19回目の今回の1番の特徴は
「日本が本格的な人口減少社会となって初めての調査」
という点にある。

この人口転換期の調査は、今後の社会の持続発展に
欠かせないデータを生む。
それは私たちの生活に必ず結びついてくる要素でもある。
そこを意識し、報告は義務と心得、望みたいと思います。

ジェクト株式会社の社長が、調査員になっていられると聞く。
お忙しいのに日本国のため尽力されているのに敬服したい。

(M.N)

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