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2012年5月 Archive

生きづらい時代だが

 <生まれた時が悪いのか/それとも俺が悪いのか・・・>
(「昭和ブルース」山上路夫・作詞)。団魂の世代が思春期を迎えた
1960年代末、そんな歌が流行(はや)った。若者を取り巻く
生きづらさは、今の時代がひどいようだ。

就職がうまくいかないことを苦にしたとみられる若者の
「就活自殺」が増えているようだ。2010年、2011年と全国で
150人を超え07年の2・5倍に上ると報道された。
リーマン・ショック後に急増し、高止まりが続いているという。

大学進学率が50%を越えている一方で、企業の雇用環境は
厳しい。長引く円高や欧州債務危機などが影を落とし、
非正規雇用の拡大や即戦力の厳選など採用枠を絞る傾向もある。

何社受験しても不採用が続けば「自分は社会に必要とされて
いないのでは」と自信を失い、落ち込んだりする学生も出てくるだろう。
それを不況期にあたった不運とか、自己責任で片付けるのは
酷すぎる話だ。

最悪の事態に至らないためにも「次の挑戦がある」と希望を持てる
多様な就職支援をすることが政治と社会に求められる。学生の側も
自分に合った企業を幅広く探して欲しい。雇用情勢はここにきて
一部に好転の兆しも出てきたようだ。就活中の学生も少なくない。
閉塞(へいそく)感に負けず、健闘を祈りたい。

行政改革

懐かしい名前を久しぶりに聞いた。「ミスター合理化」「行革の鬼」と
呼ばれた故・土光敏夫さんだ。先日、政府が新設した行政改革の
有識者懇談会が「土光臨調」を目指すそうだ。
土光臨調とは1981年に発足した第2時臨時行政調査会のこと。
東芝の社長などを歴任された財界人で、既に85歳だった土光さんが
会長に就任し、答申をまとめられた。

答申後も臨時行政改革推進審議会の会長として、行革の行方を
厳しく監視された。当時の旗印は「増税なき財政再建」だ。
国鉄の民営化や中央省庁の組織改革などに、多大な成果を挙げた。

今回の有識者懇。初会合での野田首相のあいさつは「『身を切る
改革をより一層行え』という国民の声を受け止め・・・」。どうも、
ぐずついたお天気のように、はっきりしない物言いに聞こえるのだが

特殊法人の統廃合や国会議員の定数削除などの身を切る改革。
消費税増税への熱意と比べてやる気が感じられない。
行革のポーズを国民に見せ、当面の批判をかわそう
という意図が見て取れそうなのだ。

「俺は紙くずを作っているのではないぞ。汗まみれの結果である
答申を反故(ほご)にすることは許せん」。土光語録の一つだ。
提言をどれだけ実行に移すか、野田首相の本気度がますます
試される。

ミャンマーの自由化

映画として「ビルマの竪琴」を見た覚えがある。市川崑監督が
最初にメガホンを取ったモノクロの作品だ。兵士たちが口ずさむ
「埴生の宿」の美しい合唱。僧となった水鳥上等兵が奏でる
「仰げば尊し」のメロディーが印象的だった。

その「ビルマ」から名称を改めたミャンマーで、民主化に向けた動きが
進んでいる。同国では長年にわたり軍事政権が続いていた。だが、
欧米からの厳しい経済制裁もあり、大きく方向を転換。先日行われた
連邦議会の補欠選挙は、国際社会から注目を集めた。

一連の民主化運動を指導してきたのはアウン・サン・スー・チー氏。
この間、度重なる自宅軟禁をはじめ、英国にいる家族との別離など
数多くの苦難があった。それにもめげることなく、固く重い扉を
少しずつこじ開けてきた。

彼女は「ビルマ建国の父」と呼ばれた将軍の娘。そうした血筋
だからこそ常人にはまねのできない、強い意志を持ち続けたのだ
ーと勝手に思い込んでいた。しかし、「地名の世界地図」(文春新書)
で調べてみると、ミャンマーとはビルマ語で「強い人」の意味。
なるほど合点がいった。

首都「ヤンゴン」の地名も興味深い。「戦いの終わり」という意味を持つ。
僧俗や学生など数千人が虐殺されたとされる自由化への戦いが、
いよいよ終わりに近づいたのだろうか。

あぁ、やっぱり自分は帰るわけにはいかないー。「ビルマの竪琴」の
ラストは、水島上等兵の心を代弁したオウムの声だった。
夫や子供と離れ、祖国にとどまったスー・チー・氏。二つの心が
重なって見えた。

ひな誕生を祈る

「 日本書紀」や「万葉集」で『桃花鳥』と記されている
朱鷺(とき)色の羽を持つトキ。江戸時代には全国で見られたが、
明治期に乱獲などで減り、戦後は佐渡島と能登半島に生息域が
限られ、絶滅の道をたどった。 トキがすみ着くのは里地里山。
ドジョウ、サワガニ、カエル、昆虫などを捕食する。

「佐渡で放鳥トキひな誕生」ー新聞やテレビに36年ぶりに
かわいい姿が映った。ビデオには親鳥から餌をもらう様子や
「ピピピピー」という鳴き声も記録されているという。しかも3羽も。
新たな命は野生復帰への第一歩。

13年前に中国から贈られたぺアで人工繁殖に成功し、
4年前から放鳥を始めた。44羽が生存しており、今回のペアを含め
10組の抱卵が確認されているといい、ひな誕生の続報も
期待できそう。ひなが誕生するには豊かな自然環境づくりが大事だ。

佐渡住民あげて、水田がトキの餌場に戻るように農薬を減らし、
冬期間も水を抜かない農法に着手。減農薬稲作の取り組みで
佐渡市が「世界農業遺産」に登録された。自然界には天敵の
カラスやテンなどがいる。すくすく育って、美しい舞が見たいものだ。
日々100種が全滅しているといわれるが、「放鳥トキひな誕生」は
全滅種復活の手本になる。

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