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2013年7月 Archive

豪雨の恐怖

山口県や島根県で豪雨被害が拡大している。
気象庁が出した「これまでに経験したことのない大雨」
という表現が尋常ではない気象状況を象徴している。
ある研究者は「400~650年に1度の雨」としている。

日本海上空に「寒冷渦」と呼ばれる低気圧が発生し、
そこに暖かく湿った空気が流れ込んだのが原因だそうだ。
今月中旬に東北で発生した豪雨も似た現象らしい。

1時間当たりの雨量が10~20㍉では「ザーザー」
という音がする「やや強い雨」。30~50㍉で「バケツを
ひっくり返したような雨」。50~80㍉では「滝のように降る」。
山口県萩市では28日、1時間に138・5㍉が降った。
これは「息苦しくなるような圧迫感」がある降り方という。
住民の恐怖は想像に余りある。

今夏は深刻な電力不足が予想されていないため、
「節電」のムードは昨年よりは低調だ。だが、温暖化
による地球の病は確実に進行している。時折の豪雨は
その警告に思えてならない。

 

デトロイト市

米国自動車産業の"聖地"として自他共に認めてきた
デトロイト市(ミシガン州)が破産申請したというニュースに驚き、
隔世と無常のダブル感に打たれた。それはおごったわけでは
ないだろうに。しかし何かと見誤ったとしか思えない。

日本ではまだ車が高嶺の花だった当時、一家に一台と言われた
米国の普及率を受けて華やかな脚光を浴びていたのが
デトロイト市だった。フォード、ゼネラルモーターズ、クライスラーの
いわゆるビッグスリーがしのぎを削り、「モーターシティ」との代名詞を
奉られた同市は一時180万人の人口を誇ったという。

その聖地をおびやかすようになったのが、モーターライゼーション
(自動車化)では、はるか後発であった日本だったというのが、
米国版「平家物語」の数奇な展開なのだ。取るに足らない相手だった
日本車があれよあれよという間に市場を席巻、気がついた時は
外堀が埋まっていた。

負担総額は邦貨にして約1兆8千億円に達し完全に財政破綻した
同市の現在の姿をテレビが映し出していたが、ゴーストタウンと化した
工場街や荒れ放題の公園などが、かっての栄華をしのばせて
一層哀れに見える。国がどのような救済策を講じるのかは分からないが、
夕張市の例を引くまでもなく限度はあるだろう。

デトロイトの労働者が攻撃の標的として日本車を叩き壊していた
当時の映像を思い出し、水鳥の音に驚いて逃げ出す前に、敵は何か
と考えていたらこういう結果にはならなかったろうにと、凋落の根源
を考えて見た。

NHK朝ドラ『あまちゃん』。

高視聴率をはじき出すNHK朝の連続ドラマ『あまちゃん』。
毎朝欠かさず見ているわけではないが、フラッシュバックされる
昭和59年当時の雰囲気につい感情移入してしまう。

脚本の冴えだろう。テンポが速く面白い。さらに演じる俳優陣が
かってのアイドルでもあり、劇中劇の趣もある。おそらく40歳以上なら、
主人公の母親役小泉今日子と大物女優役薬師丸ひろこの
2大アイドルの人気度はリアルタイムでご存じだろう。

ドラマは半年間のため、残り2ヶ月少しになったが。東京での
沈滞ムードを引きずった主人公が北三陸で迎えた平成22年
初頭の場面が進行している。おそらく終盤に向けて、東日本大震災の
悲劇も不可避なテーマになるのだろう。

同番組では、灘の造り酒屋を舞台にした『甘辛しゃん』が
阪神・淡路大震災を取り上げたことがある。今後、刻々と迫る
未曾有の大災害をどのように描き切るのだろうか。
震災発生2年半近いが、心穏やかではない。

 

土用の丑

土用の丑の日が近づいてきました。ウナギのかば焼きは、
数ある魚料理の中でも味わいや香りに格別のものがあります。
この時期になると、何としても食べたくなるのが人情です。

年中食べても飽きないという熱狂的なファンが、ウナギには
多いようです。歌人の斎藤茂吉氏は、長男の見合いの席で、
相手の女性が手を付けないでいたウナギをもらい、食べて
しまったことがあるそうです。

将棋の加藤一二三九段は、出前の早さや栄養面の利点を理由に、
対局のたびにウナギを食べることで知られています。

こうした逸話を聞いているだけでも、ウナギにかぶりつきたく
なってきますが、各界の名士に比べてこちらは圧倒的に
懐具合が寂しいのが、悲しくも現実です。よって、自動的に
年に1、2度の楽しみとなります。

しかも最近では国産種だけでなく、欧州産の別種の稚魚が
減っており、クジラという先例を考えた時に、中長期的な資源量の
管理の厳格化も懸念されます。

庶民の味方としてサンマやアナゴのかば焼もありますが、
おいしいのですが、やはり別の魚です。ウナギを存分に
楽しめる日がいつまでも続くことを願っている一人です。

ウイスキーの味わい

酒が好きだった父は、晩酌で安物のウイスキーを
ちびりちびりと飲んでいた。たまに高級ウイスキーが
手に入ると、飲み終えた空き瓶にいつものウイスキーを
詰め替えていた。中身は安物でも、いい気分で
飲めたのだろう。

バブル花盛りの1990年時代、関東ではボトルキープ
といえばウイスキーだった。同じころブランデーが好まれた。
どこのスナックの棚にも、VSOPやナポレオンがずらりと並んでいた。

やがて日本酒ブームが到来し、全国の地酒が身近な居酒屋で
飲めるようになった。個人の好みで言えば、辛口のさっぱりした酒が
口に合う。それぞれの酒の古里に思いをはせながら味わうのがいい。

次にきたのが焼酎ブームで、いまも居酒屋では主役の座にある。
ロックでも湯割りでもいけるし、女性好みの甘いカクテルもある。
「とりあえず」のビールは別格として、焼酎抜きの酒席は
考えられないほどだ。

そのあおりでウイスキーの需要は低迷していたが、炭酸水で割る
ハイボールのヒットで人気を盛り返してきたという。確かに居酒屋では
飲む機会が増えた。とはいえ酒店ではまだ、売り場の片隅に
追いやられている。

久しぶりぜいたくして、ストレートでおいしく飲めるシングルモルトの
小さなボトルを買った。たるの中で10年間熟成された味はまろやかで、
強めのアルコールがすっと鼻から抜けた。流行に左右されない
ものづくりも大切だと気持ちよく酔いながら思った。

政治の役割

政治の大きな役割の一つに、社会保障がある。私たち一人一人が
安定した生活を続けるために、国や自治体が所得を、こちらから
あちらに移すことによって、年金、医療、介護、育児などのサービスを
行う制度だ。

今日ほど、社会保障が叫ばれる時代はない。というのも、
少子高齢化が急速に進行し、高齢者に充てられる給付額が増大
しているからである。国全体で毎年3兆円増え続け、いかに財源を
確保するかが、最大の課題と言える。世代間負担の公平を図り、
持続可能な制度にしないといけない。

ここまでは、多くの人たちが共通認識を持っているのだが、
わが身に降りかかってくると、保険料、税は引き上げてもらっては困る。
しかし、保障費はもっと充実させてほしい、と思ってしまう。参院選
で各党、社会保障をどう改めようとしているのか。

公約を見ると、「消費税は社会保障に使う」(自民)「最低保障年金の
創設を目指す」(民主)「公的年金は積み立て方式に移行する」(維新)
「税と社会保険料を一元管理する庁を設ける」(みんな)などで、
改革の道筋はわかりにくい。安心して老いてゆける社会はどこに、である。

心に柱を

報道された写真を見ると、塔(とう)のあった跡に
柱が1本立っている。解体修理中の薬師寺東塔(やくしじとうとう)
の心柱(しんばしら)を取り外す貴重な光景だった。

日本では亡くなった人の命を「柱」と呼ぶ。柱には神が宿る
とされ命の代名詞になった。塔はその象徴だ。高い塔を
支えるために柱を立てるのではない。柱を守るために
壁や屋根が必要なのだ。だから心柱と呼ぶ。柱が命の塔の
本質がわかる写真だった。

中国などの石造(いしづくり)りの五重塔は内部が空洞
(くうどう)になっている。日本の塔とは似て非なるものとされる。
薬師寺東塔の心柱は2本の大木をつないである。上部は
取り換えられたものだが、下部は1300年前のまま。
樹齢(じゅれい)は1500年と推測される。

樹齢千年の木で建てた塔は千年の風雪に耐える。
千年の木を育てる森林ができるには「千年かかる」という。
薬師寺復興に関わった宮大工、西岡常一(にしおかつねかず)
さんの言葉である。

立派な塔には立派な木材が、いい木材を育てるにはいい森林が
必要だ。民主主義に似ている。政治家も有権者も一日では育たない。
遠い先を視野に足元を固めていくのが選挙だ。心の柱を。
党の政策に命を。

信じる

歴史年表をみると、世界ではナチスのベルリン五輪開催、
国内では二・二六事件が起きた。そんな1936(昭和11)年以来の
出来事に英国中が沸いた。テニスのウィンブルドン大会男子で、
マリー選手が英国人として77年ぶりに優勝した。

試合後「勝てないときも我慢し信じてくれた」とコーチに感謝した。
コーチは米国人のイワン・レンド氏だ。テニスファンなら知らない人は
いない、往年の名選手だ。信じて待つ師匠と、それに応えた弟子。
そう書けば、米英の師弟なのに浪花節の雰囲気が漂う。

77年ぶりとまではいかないが、大相撲は久しぶりの日本人横綱
誕生の期待に沸く。加えて注目されるのが八百長問題をめぐる
裁判で勝訴し、土俵に帰ってきた蒼国来(そうこくらい)と、初の
アフリカ人関取の大砂嵐(おおすなあらし)だ。

初日から黒星が続く蒼国来に対し、師匠の荒汐親方は
「きょうよりあした」と話し、こちらも一貫して信じて待つ構えで臨む。
期待に応えて昨日、蒼国来は待望の白星を手にした。

白星先行の大砂嵐は昨日の日没から、イスラム教徒のラマダン
(断食月)が始まった。今場所は、日の出から日没まで飲食を
禁じられた状態で相撲を取る。母国エジプトの混乱も気になるだろう。

午前2時に起き日の出まで食べて飲んで土俵に備える。
そんな大砂嵐を、部屋を挙げてサポートする。支えがあるから
踏ん張れる。支える人と支えられる人だ。国籍は関係ない。

願いごと

近所のスーパーマーケットに、七夕飾りがお目見えした。
客寄せのための営業企画という"今どきの風流"だが、
目にすると季節を感じ、心がほっと和みます。赤や青、黄色の
短冊に子どもたちの願いが書き込まれている。「お花やさんに
なれますように」「アイドルになりたい」「勉強ができますように」
「はあとのおみみのくまさんがほしい」

無垢(むく)な願いに交じって、こんなのもあった。「家族の
みんなが笑顔でいられますように」「じいちゃんの腰が治りますように」。
きっとかなうよ、周囲に気付かれぬようにつぶやいた。

大人たちが願い事を託す参院選が明日、告示される。有権者は
何を願うのだろう。景気がよくなりますように、生活が楽になりますように、
東日本大地震での避難者が早く古里に帰れますように。

世知辛い世の現実にのまれ、願うことすら忘れているかもしれない。
しかし政治とは本来、人々の夢や希望、目標によって形づくられるはずだ。
それが民主主義、と信じたい。

有権者の願いはただし、祈るばかりでなく行動しなければかなわない。
子どもたちの数え切れない願いは、七夕飾りをしなだれさせた。
大人たちの短冊も、たくさん投じられますように願いたい。

有権者に響く言葉を

「だました人が悪いのか、だまされた私が悪いのか」。
衆院小選挙区定数の「0増5減」に伴う区割り改定法を再可決した
先日の衆院本会議。久々の表舞台だったが、発した言葉は
少々情けなかった。前の首相、民主党の野田佳彦氏だ。

自公民の3党合意だった今国会での選挙制度改革の実現は
先送りに。攻守の立場がかわり安倍晋三首相への悩み節
だったのだろうが、「0増5減」の先行可決に反対した民主党にも
責任はある。通常国会の会期末まで参院議長不信任決議案、
首相問責決議案の応酬と与野党対立むき出し。そのあおりで
電力システム改革を進める電気事業法改正案など重要法案が
廃案になった。国民そっちのけでは、政治不信、政治離れが
進むばかりだろう。

「へいわってうれしいね。みんなのこころから、へいわがうまれるんだね」。
沖縄戦が終結した「慰霊の日」の戦没者追悼式で、沖縄県与群国島の
小学1年生が朗読した詩の一節だ。基地負担軽減を誓う安倍首相
の空疎な言葉と対照的だった。

来る参院選では、憲法改正,TPPの参加、原発再稼動など
日本の将来が懸かる争点がずらり。ぜひ有権者の心に響く
政治家の言葉を聴きたい。巧言にはだまされない。自民党の優勢が
伝えられるが、都議選を見ると民主党の支持回復はまだ遠いようだ。
そういえば、野田氏が愛唱するのは武田鉄也さん作詞の
「思えば遠くへ来たもんだ」とか。<この先どこまでゆくのやら>の
歌詞が身に染みる今日このごろか。

伝承の技

薬師寺が建った1300年前、今のカンナに相当する大工道具は
なかった。長い柄(え)にナイフのような刃(は)をつけたヤリガンナ
という道具で木を削った。

昭和初期、法隆寺の夢殿(ゆめどの)で厨子(ずし)を
造り替(か)えることになった。古式のヤリガンナの使い手を捜したが
関西にはいなかった。そこで招かれたのが加賀の銅鑼(どら)造りの
初代・魚住為楽(うおずみいらく)さんだった。仏壇造りの
修業もした魚住さんは木工技術にも長けていたのだ。

これは大変なことだった。宮大工の本場の奈良で消えかかった技法が
加賀の工芸の中に残っていたのである。薬師寺や法隆寺が守りぬいた
世界的な宗教遺産と地方の伝統工芸が一本の糸でつながっている
ことを意味している。

井波(いなみ)の木工や輪島や山中漆器(しっき)の木地づくりの
技法と飛鳥(あすか)白鳳(はくほう)期の仏像の木肌に共通するものが
あると言っても不遜(ふそん)ではないでしょう。
古代の匠たちも、今日と同様、日常の家造りや器造りの中で
技を鍛え磨いたに違いない。

先日の同窓会で国宝薬師寺展を参観した友人から人と時をつなぐ
伝承の技に感動したと伝え聞いた。また、ジェクト株式会社
創立者・重太郎さんが生存されていたら、大工道具の歴史を教えて
いただけるのだが。

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