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2013年6月 Archive

女性宇宙飛行士

「私はカモメ」。女性として世界で始めて宇宙飛行に成功した
旧ソ連のテレシコワさんの"第一声"が報じられたのは、今から
50年前、1963年6月のことだった。その2年前に人類初の
宇宙飛行に成功した旧ソ連のガガーリンさんは「地球は青かった」
と言う言葉を残した。「青い地球」を飛ぶ「カモメ」は宇宙の
ロマンを思わせる。

詩人かとも思われたテレシコワさんは政治家になった。
76歳の今もロシア下院議員で外交副委員長を務めて
いられるようだ。50周年の記者会見では、地球を外から見た
一人として人類共存を訴えられた。宇宙のカモメ気分を味わった
女性は今は各国にいられる。50周年を記念してウィーンで
女性宇宙飛行士の討論会が行われた。日本から出席した
向井千秋さんは、宇宙では男女やさまざまな民族が
協力できると話し、「人類の絆」を強調されたそうだ。

女性を抜きに宇宙での絆は語れない時代になった。
月の次の目標になる火星も例外ではない。米航空宇宙局
(NASA)が火星などの有人探査を目指す宇宙飛行士候補として
先ごろ選んだ8人のうち4人は女性だ。地球以外の惑星にも
羽を広げるカモメを想像する。

50年前のカモメは実はテレシコワさんの暗号名で
「こちらカモメ」と交信したにすぎないという。思えば当時は
東西冷戦下だった。冷戦を象徴する暗号名に羽が生えて
伝えられたのかもしれない。宇宙にはロマンの方が似合うようだ。

看護師さんの労働

「病室担当の看護師さんが優しい人かどうか」。かって入院した時、
こんなたわいのないことが患者にとっては日々の関心事だった。
期待する中の一人だと分かると、ほっとしたものだ。看護師さんの
優しさは患者の心に力を与えてくれる。

その看護師さんを含む看護職員から、ここ一年間に「辞めよう」と
思った人が半数に上る、と聞いた。「病院をかわりたい」という人も
いるそうだ。職場に不満を抱いている人が多いのに驚いた。これでは
優しさを発揮する気分になれないこともあるのでは、と少し心配になった。

「賃金が低く、努力のかいがない」「人手が足りない」「やりがいが
感じられない」「事故を起こすのではないかと不安」。不満の理由だ。
いずれも仕事量の多さが背景にあるようだ。三交代制で夜勤が月
9回以上の人もいた。

「日勤を終えて病棟を後にするのは午後8時を過ぎるのが普通」
「夕食を夜中にとるのが普通になり、睡眠不足状態の朝は食欲が
なくて食べなくなった」。こんな新人看護師さんの声を聞いた。

看護師さんの仕事は人の健康や命に関わる。忙しすぎて、
事故の不安が募るような労働環境は早急に改善してほしい。
それまでは患者やその家族が日々感謝の念を示し、看護師さんに
ストレスを和らげてもらおう。

日本野球機構(NPB)に問う

「本塁打量産はなぜ?」飛ばないはずの球が次々とスタンドへ
運ばれるのはどうしてかー。その謎が解けた。「飛ぶボール」になって
いたのだ。日本野球機構(NPB)が、昨年より反発力を増すように
メーカーに微調整を指示していたことを明らかにした。

「事実を公表しなかったのはなぜ?」。今季、球の感触の違いを
実感する選手もいたが、NPBはこれまで「球を変えた事実はない」と
主張していた。しかし実際は変わっていた「混乱を招かないように
公表しなかった」としているが納得できる説明ではなく、
別の理由があるのではと疑問が残る。

選手にとってはもちろんだがファンにとっても大きな問題だ。
「ホームランが多くていい」という単純なことではない。
だまされていたとの思いは否めず、心から楽しめなくなりはしないか。
今回のことで、選手やファンはNPBに対して疑念を持ってしまった。

ボールは石ころを布で巻いて古いマットで包んで作った。
バットは木か竹棒で手づくりだった。赤バット川上、青バット大下選手を
応援した頃のオールドファンも離れていく。「ファンが離れていったのは
なぜ?」という事態に陥らないよう、統括組織としてのNPBの
今後の姿勢が重要であると思う。


北の湖土俵入り

日本相撲協会の北の湖理事長が還暦の土俵入りを披露した。
太刀持ちに九重親方(元横綱千代の富士)露払いに貴乃花親方
を従え、昭和から平成にかけての大横綱のそろい踏みだった。
重心の低いあんこ型の姿はそのままだった。現役時代と同様に
早い所作で雲竜型の土俵入りを見せてくれた。せり上がりで
少しふらつく場面もあったが、威風堂々とした姿が、まぶたに残る
昭和の残像と重なった。

現役理事長で還暦の土俵入りをしたのは1988年の二子山以来
という。スピード出世を遂げた北の湖は、史上最年少の21歳2ヶ月で
横綱昇進をつかむ。憎たらしいほど強かったが真摯に土俵を務めた。
理事長就任は2回目。1回目は力士暴死事件や大麻問題などから辞任。
その後、角界は八百長問題で存亡の危機に立ち、土俵際からの
出直しとなった。

相撲協会理事長の再登板は史上初。政界では安倍首相が昨年、
再登板を果たし、内政、外交に大懸案を抱えながらも高支持率を
維持している。北の湖理事長も相撲人気のV字回復を果たしてほしい。
まずは日本人力士の奮起だ。日本人の活躍がなく、大相撲の
発展はないのだから。

 

国民総所得

国の経済規模を測る指標といえば、GDP(国内総生産)が代表格だ
。以前多用されていたGNP(国民総生産)に取って代わったのは
20年ほど前になろうか。今度は新たにGNI(国民総所得)だという。
安倍首相が「10年後に1人当たりの国民総所得を150万円増やす」
と打ち上げた。アベノミクスの3本目の矢、成長戦略に明記された
数値目標である。そのまま受け取ると、夢も膨らみそうだが。

1人当たり年間150万円なら月に12万5千円ー。そんな
皮算用をしたら、残念ながら「取らぬタヌキの」である。GNIは国民や
日本企業が国内外で得た所得の総額を示す数字だ。企業が利益を
上げても給料にはね返らない限り、社員の懐にはつながらない。

新興国の成長の取り込みを掲げるなかで、指標はGDPよりGNIが
時代にかなっているというのは理解できる。ただ、「総所得」アップの
響きから連想する池田勇人元首相の「所得倍増」とは異なるのが、
今回の矢の的だと心得ておく必要がある。

昭和35(1960)年に首相に就いた池田勇人元首相は「所得倍増」を掲げ、
それは7年後に実現する。池田元首相の決意と、経済政策ブレーンとして
支えた下村治氏や田村敏雄氏の奮闘は、作家沢木耕太郎さんの
『危機の宰相(さいしょう)』に詳しく記載されている。夢を現実にする各氏の
誇り高い物語は今も色あせない。

精神修養

「柔術」を「柔道」と改めたのは講道館を創始した嘉納治五郎
(かのうじごろ)氏だ。柔術に打ち込むは乱暴者が多かったらしい。
「柔術は勝つための術を教えるが、人間が踏み行べき道が
忘れられいる」。嘉納治五郎氏はそう見た。

「まず精神修養で根本となる道を教え、術はその次に教えるべきだ」。
こんなえから名称を「柔道」した。講道館は「道」を講ずる教育所
という意味だ。修業の目的も崇高だ。社貢献に努め、人類が
ともに発展していくことにあるという。

この理念があるから、柔道が世界に広まったのだろう。
米国大統領だったセオア・ルーズベルトも心に学んだという。
嘉納治五郎氏はアジア初のオリンピック委員にもなられた。

その栄えある日本柔道が醜聞にまみれていると報道されている。
女子選手への力問題や助成金不正問題に続き、全日本柔道連盟の
70代理事による女性へのわいせつ行為もるみに出た。
嘉納治五郎氏が亡くなって75年。たがが緩んでしまった。

嘉納治五郎氏の教育は独特だ。道場番の門弟が禁止されている
酒を友人と飲んいるところに突然れ、空の一升徳利(とっくり)を
両足に挟みながら熱心に形(かた)の説明をされた。二人は青くなっが、
嘉納治五郎先生は酒のことは何も言わず戻られたそうだ。
今も天上から気利いた論しの言葉発していられることだろう。
柔道界に聞こえていると思うのだが。

三浦流の人生

先日、三浦雄一郎さんの『80歳の挑戦』と題してエレベスト登頂の
ご成功を祈っていたが、史上最高年齢の80歳で世界最高峰エレベスト
(8848メートル)の登頂に成功された。冒険家の三浦雄一郎さんから
元気をもらった人は多いはずだ。

真っ黒に日焼けした顔。年齢からくる『老い』は、感じられなかった。
8千メートルを越える高所の酸素量は平地の約3分の1だそうだ。
常に死の危険とも、隣り合わせだ。素朴に「どうしてあの年で
あんなことができるのか」と思ってしまう。骨折や不整脈の手術もなされた。
それでも夢をあきらめずに3度目の快挙をなし遂げられた。
何が三浦さんを挑戦に駆り立てているのだろうか。

三浦さんは、『私はなぜ80歳でエレベストを目指すのか』の問いには、
「達成したくなる目標があれば、体力の回復は必要に応じてついてくる」
と答えられた。目標とするのは「自己新記録」で、それがたまたま
「世界新記録」になるのだと。

下山したばかりで、疲労困憊(こんぱい)のはずだが、今度は原点である
スキーヤーとして、世界6位の高峰から滑降する新たな目標を揚げられた。
前へ前へと歩みを止められない。三浦さんのパワーには、敬服するばかりだ。 

目標設定には年齢は関係ない。理由をつけては、その日暮らしを続ける
わが身の戒めとしたい。

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