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2010年11月 Archive
大相撲九州場所
- 2010年11月29日 14:50
- M.N氏の岡目八目
今年の納めとなる大相撲九州場所は、
横綱白鵬が優勝決定戦を制し、5場所連続17度目の優勝
で締めくくった。「波瀾(はらん)万丈」という言葉が
ふさわしい場所であった。
今場所、最大の関心は何といっても
白鵬が双葉山の69連勝を追い越せるかどうかだった。
先場所までの安定感からして
「歴史的な瞬間が見られるのでは」と思わせた。
ところが、落とし穴は2日目に早くも待ち構えていた。
平幕稀勢の里の攻めの前になすすべなく土俵を割り、
歴代2位の63連勝で終わった。「こんなものでは」という言葉に、
白鵬の複雑な心境と双葉山の偉大さが重なった。
大きな見せ場が消え、つまらない場所になるかと心配したが、
新たな話題が次々に生まれ盛り上げた。
稀勢の里はもちろん、地元出身の人気大関魁皇の快進撃、
そして平幕豊ノ島の優勝決定戦。
日本人力士が久しぶりに存在感を示した。
角界全体も波乱万丈の年だった。
野球賭博事件に揺れ開催が危ぶまれた名古屋場所では、
天皇賜杯やNHKの生中継もない異例の事態に。
そんな中で、光を放ってきたのが白鵬の連勝記録だった。
来る新たな年、各力士には心機一転で大相撲の魅力を
存分に見せてもらいたい。角界の改革へ、
日本相撲協会が不退転の決意で臨み、
私たち相撲ファンを魅了させてほしい。
(M.N)
神田神保町
- 2010年11月22日 14:35
- M.N氏の岡目八目
東京の神田神保町は、180近い店が集まる
世界一の古本屋の街だ。
辺りを歩くと、浮世絵や漫画の専門店などの個性的な店が見つかり、
飽きることがない。
四季折々に催しが開かれる。
秋の「神田古本まつり」はとりわけ有名だ。
歩道にワゴンが並び、本好きやコレクターでにぎわう。
今年は天気に恵まれなかったが、それでも雨の切れ間には
人波が絶えなかった。
八木沢里志さんの小説「森崎書店の日々」(小学館文庫)は
神保町が舞台だ。今秋、映画にもなった。
恋に破れたヒロインの貴子は、叔父が営む古書店に住み込むようになる。
読書の楽しみなど知らなかったが、
神保町の人々や本と接するうちに癒されていく。
ある本には押し花のしおりが挟まれいる。
梶井基次郎の小説「ある心の風景」を読むと、ぺんで線を引いた箇所があった。
前の持ち主が感銘を受けたのだろう。
どんな思いで読まれたのか想像してみた。
そんな場面が古書の楽しみ方を象徴する。
神田古書店連盟がつくった案内書にはいろんな店を紹介している。
司馬遼太郎さんは生前、執筆のため軽トラックいっぱいの古書を
購入されたそうだが、まだまだ「お宝」はひしめく。
広重の浮世絵もあれば、フランスで200年以上前に出た
「百科全書」にも出合える。
楽しみは古書に限らない。一休みできる喫茶店やカレー店も多い。
読書の秋だ。歩くうちに、いつしか時を忘れさせる、そんな街である。
(M.N)
龍馬伝
- 2010年11月15日 18:27
- M.N氏の岡目八目
坂本龍馬の妻お龍がとわの眠りにつく
横須賀市大津の信楽寺(しんぎょうじ)を訪ねた。
駅から寺までの道筋に「おりょうさんの街」と書かれた
のぼりがはためいていた。山門をくぐり、墓地に入ると、
山すそにお龍さんの墓がある。
花などが供えられ、お参りをする人の多さを物語る。
大河ドラマ「龍馬伝」の影響もあるようだ。
本堂には龍馬とお龍の等身大の木彫坐像が置かれている。
4年前、「よこすか龍馬会」がお龍の没後100年を記念して
作ったものだ。2人の結婚生活はわずか2年足らずで終わったが、
並んだ姿は長い間連れ添ってきたかのように映る。
参拝者が備え付けのノートに書き留めた一言が小冊子になった。
「いつも心の支えになってくれてありがとう」
「龍馬さん、今度はお龍さんを離さないでくださいネ」
「龍馬さんのような、すばらしい人を支えられる女性になれるよう
見守りください」。
龍馬やお龍への熱い思いの詰まった一言集を、
お龍の再婚相手で、横須賀で30年余りをともにした
西村松兵衛さんはどういう気持ちで眺めているのだろう。
坐像の脇に安置された松兵衛さんの位牌を見ていると、
そんな思いについとらわれた。
大河ドラマはいよいよクライマックスが近づいてきた。
京・近江屋での龍馬暗殺をどんなふうに描いているのか知らないが、
今日15日は龍馬の命日だ。
(M.N)
善人・悪人
- 2010年11月12日 15:56
- M.N氏の岡目八目
人として、絶対にしてはいけないことがある。
例えば、他人の命を奪うことだ。その行いは「悪」として
断罪される。それでは悪事を犯した人はみんな悪人なのか。
やったことの責任は免れない。悔い改めるべきである。
だからといって、人のすべてを「悪」と切り捨てられるだろうか。
森鴎外の「高瀬舟」は、弟殺害の罪で島流しにされる町人の話だ。
重病に倒れ、兄に迷惑をかけるのを苦にした弟が命を絶とうとする。
兄は弟の懇願に負けて手を貸してしまう。
護送の役人は「それが罪であろうか」と考え込む。
「善人が極楽浄土に迎えられるのなら、悪人も救われて当然だ」。
高僧、親鸞は説いた。正直に生きて暮らせない当時の世相、
人は生きるために人を裏切り、悪事にも手を染めた。
誰もが地獄に落ちると信じた。
親鸞はそうした庶民にこそ光をと考えた。
吉田修一氏の「悪人」は殺人を犯して逃げる若者を描いた
現代小説だ。犯した罪は償わねばならない。
ただ、罪は犯さなくてもあくどい心の持ち主もいる。
本当に悪いのは誰か。混とんとした今の時代を
浮かび上がらせる。
映画化した作品でヒロインを演じた深津絵里さんが、
モントリオール世界映画祭で最優秀女優賞を受賞した。
日本人では2人目の快挙だった。
逃げる若者を信じて一途の寄り添う女性の姿が、
寄る辺なき今の時代を映し出したように思えた。
久しぶりに観た映画で心打たれた。
(M.N)
読書
- 2010年11月10日 17:46
生活習慣は時代とともに移り変わる。
読書もそのようだ。
本を手に取ってページをめくるだけが
読書ではない。そんな時代になってきた。
電子書籍が注目されている。
文字や絵などを紙に印刷するのではなく、
電子情報とし記録した「書籍」のことである。
米国で市場が拡大し、黒船のように日本に押し寄せてきた。
きっかけは多機能携帯端末iPad(アイパッド)の発売だ。
ネット上で書籍を購入し、受け取ったデータを画面で読む。
後を追って各社からさまざまな端末が発表され、
出版業界も電子出版に力を入れ始めた。
にわかに火が付いた格好だ。
娘から借りて使ってみると、工夫がなされているのが分かる。
画面上のページを指でめくるようにして操作する。
内容をコピーしたり、言葉を検索したり、何冊分ものデーターを
持ち歩けるのは、紙にない利点だ。
活字離れが指摘されている。
本の4割が売れずに返本される現実もある。街の書店も減った。
電子書籍が出版文化を盛り上げてくれるのなら、
新技術も大歓迎だ。ただし、機械の操作に慣れない人は
なじみにくいに違いない。
どちらかが一方を駆逐する関係ではなく、うまく共存できればいい。
肝心なのは書籍の内容に親しむ姿勢である。
「読め、読め、読め。何でも読め。駄作も古典も良しも悪(あ)しきも」。
米国のノーベル賞作家、フォークナーの言う通り、
読書の楽しみは読むことから始まる。
(M.N)
協働
- 2010年11月 8日 12:48
- M.N氏の岡目八目
横浜港に面した「山下公園」は80年前に開かれた臨海公園だ。
大きな木々と色鮮やかな草花。
群れ遊ぶカモメ。潮風が抜ける遊歩道・・・。
”憩いの場”といわれる条件すべてを備えたような
この公園は横浜市民の誇りであろう。
公園内の芝生で、芝生に交じった雑草を
丁寧に抜いている30人ほどの人のかたまり。
青い芝生が雑草に負けてダメにならないように黙々と、
そして生き生きとして作業をなされている方々に出合った。
地元自治会の有志面々のようである。
「市民の手で山下公園の芝をすこやかに育てるために雑草を
抜いています。ー元町自治運営会」という小さな看板があった。
さて、この取り組みの、そもそものいきさつは・・・。
最初の呼びかけ人は誰なのか。そのときの反応はどうだったのか。
感心な作業をじっと見ながら考えた。
「公園の管理・維持は行政が責任を持つのが当たり前」という考えもあろう。
しかし、この広大な芝生の雑草の抜き取り作業を行政がやるとしたら
大変な予算が必要だ。”公”のすべてを行政に求めたらどうなるか。
結局、その負担は形を変えて市民に戻るしかない。
誰だって心安らぐ憩いの場が近くにあればと思う。
つまり快適な公園の提供は"住民ニーズ”そのものである。
しかし、もはや”住民ニーズ”のすべてを行政に求めていくような
時代ではない。市民にできることは市民の手でーと考える人たちが
”かたまり”となったら大きな力となる。
市民も行政の担い手として自ら積極的に
地域の課題にかかわっていくのである。
「ボランティア」という言葉でひとまとめにしてくくれない市民参加。
これが「協働」ではなかろうか。
(M.N)
上海万博閉幕
- 2010年11月 2日 07:55
- M.N氏の岡目八目
半年にわたる中国・上海万博が幕を閉じた。
入場者数は目標の7千万人を突破し、1970年の
大阪万博を抜いて史上最多。
温家宝首相は「成功」と胸を張られた。
2008年の北京五輪に続く重要な国威発揚の場。
大きな混乱もなく終えたことに、中国指導者は
自信を深めていられることだろう。
多くの国民も同じような思いだろう。
先進国の仲間入りを目指す一歩だが問題はこれからだ。
40年前の大阪の熱狂を思い出す。
未来の科学技術などに、多くの人々が酔いしれた。
ただし、生みの親の一人である作家の小松左京さんらが
述懐しているように、「人類の進歩と調和」という
テーマがどれだけ理解されていたかは疑問だ。
上海が揚げたのは「より良い都市、より良い生活」。
科学技術によって環境を重視した都市づくりを進める、
ということのようだ。環境より経済発展を優先させる空気は
まだまだ色濃いから、国全体の大きな転機になってほしいと願う。
人々が「より良い生活」から思い浮かべる姿はさまざまだろう。
大阪万博後の日本のように、さらなる豊かさを追い続けるのは
むろんだが、一方では人権の重視や政治の民主化などを
求める声が強まる可能性もある。
「中華民族100年の夢」の万博が閉幕したいま、
中国に果たして変化が生まれるのかどうか。世界各国にとって
好ましい方向への変身なら、いうことはないのだが。
(M.N)
人生の充実
- 2010年11月 1日 10:38
- M.N氏の岡目八目
3年前、東京・六本木にオープンした複合商業施設「東京ミッドタウン」。
その敷地の一角に、ガラス張りの独創的な形が美しい
デザイン・ミュージアム「21-21デザインサイト」がある。
服装デザイナーの三宅一生さんが建設を提案し、
建築家の安藤忠雄さんが設計した建物だ。
その二人がそろって文化勲章を受賞された。
これも何かの縁だろう。
日本の着物のように体を包む「一枚の布」をコンセプトに、
西洋と東洋を融合した衣服を創造した三宅さん。
一方の安藤さんは、シャープなコンクリート打ち放しの外観や光などの
自然環境を大胆に取り入れた設計で世界の建築界をリードしてきた。
歩みは必ずしも順風漫帆ではなかった。たとえば、
高校卒業後に独学で建築の道に進んだ安藤さん。
思うようにいかないことばかりで、大抵は失敗に終わったという。
(自伝「建築家安藤忠雄」新潮社」
そして、こんな幸福感を導き出す。
<人間にとって本当の幸せは、光の下にいることではないと思う。
その光を遠く見据えて、それに向かって懸命に走っている。
無我夢中の時間の中にこそ、人生の充実があると思う>
三宅さんと安藤さん。二人が遠くに見据えてきた<光>は、
もちろん文化勲章などではないだろう。
無我夢中のクリエーテイブな挑戦が、
これからまだまだ続いていくことだろう。
(M.N)
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