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2011年4月 Archive

心温まる力を与える行動

「 日本の強さは団結力」「一人じゃない。みんながいる」「頑張ろう日本」。
東日本大震災を機にテレビなどで有名人が語る被災地への応援メッセージ。
ここ数週間は故坂本九さんの名曲が流れ、被災地はもとより日本全体を
励ますようなCMにはおのずとパワーがみなぎってくる。

「頑張ってください」。被災した人たちには確かにそう言いたい。
そしてエールは送り続けなければならない。だが大津波で家と家族を失い、
住む場所さえままならない過酷な状況下の被災者に、
果たしてこの言葉を掛けられるだろうか。自問自答している。

石原プロモーションの渡哲也さんや舘ひろしさんらが
被災地の宮城県石巻市で1週間にわたって大がかりな炊き出しを行った。
俳優、スタッフ総勢100人は最終日の20日まで風呂に入らず、寝袋で
生活する様子がテレビで流れていた。被災者と連帯感を強め、
少しでもあすの活力になればーとの思いから同じ境遇に身を置いたのだろう。
そして親身になって話を聞いた。

「心が温まりました」。やはり力強い行動こそが一番のぬくもりだと感じた。
なかなかできるものではない。「頑張って」はその後でいいように
生意気ながら思った。石原プロモーションの方たちに頭が下がり、涙した。


(M.N)

「なぜ」「どうして」

「なぜ」「どうしてうちの子が」・・・。
悲痛な叫びが、どれだけ飛び交わったことだろう。
栃木県の国道で、集団登校していた小学生の列に
クレーン車が突っ込み、4年生から6年生までの児童
6人が命を奪われた。

みんな元気で明るい子だったという。
クラスのムードメーカーだったサッカー少年、
二人暮らしの母親のために、毎日家事を手伝っていた女の子、
野球が得意で事故の朝も母親とキャッチボールをした男の子・・・。

「行ってきます」と元気に家を出た子が、「ただいま」
も言わずに帰宅する。誰がそんな場面を想像しただろう。
孫のなきがらを抱いて病院から連れ帰った祖母は、
「まだぬくもりが残っていた」と無念そうに話していられた。
遺族の気持ちを思うと胸が詰まる。

事故現場にはランドセルが散乱していた。
地獄のような光景は、東日本大震災ばかりではない。
穏やかな日常の中にも残酷な不条理が潜(ひそ)んで
いることに、あらためて気づかされる。

検査関係者によると、現行犯逮捕された26歳の運転手は
「居眠りしてしまった」と供述したそうだ。
一瞬の気の緩みが、6人の子どもの未来を乱暴に
もぎ取ったわけである。

東日本大地震は天災だが、この事故は人災だ。
人災なら妨げるはずだ。ハンドルを握る人は、
いま一度、自分の凶器に乗っているという自覚も
持っていただきたい。「なぜ」「どうして」の叫びは
孫を持つ一人として、二度と聞きたくない。


(M.N)

リーダーの心構え

法隆寺金堂の再建などを手掛け、「日本最後の棟梁」と
呼ばれた宮大工、西岡常一さん(故人)が
棟梁の心構えを次のように説いていられる。

「木は土地や風向き、日当たりによって癖がある。
木の癖を見抜いてそれを適材適所に使うことやね」
(『木のいのち木のこころ』草思社)。
木は「人」に置き換えることもできる。

法隆寺の再建に集まった若い工人らは個性派ばかり。
西岡さんは工人らの癖を見抜き、心を一つにして
難事業を成し遂げる。「木を組むには人の心を組め」。
名棟梁が残した言葉は人を束ねるリーダーへの遺言でもある。

リーダーといえば、東日本大震災後の日本再建を担う
「棟梁」、首相の手腕は心もとなく見える。
福島第1原発事故の対応は後手後手、場当たり的に映る
避難対策には被害者の不信感が募る。

死者・行方不明者2万7627人。避難者13万6438人
(4月19日午前10時現在、警察庁まとめ)は避難所
生活を送り、明日さえ見えない日々を過ごされている。
リーダーは今こそ、日本再建に向けて青写真を示し、
みんなの心を一つに束ねる言葉を語ってほしい。

「百論を一つに止める器量なき者は慎み惧(おそ)れて
匠長(棟梁)の座を去れ」。難事業を率いた西岡さんは、
こう自身に言い聞かせて奮いたたせた。
日本再建という空前絶後の難事業に挑む「棟梁」も
胸に刻む言葉である。

(MN)

 

新入生

肩幅より大きいランドセルを背負った小学生や
ダブダブの制服を着た中高生。
初々しい1年生の姿が目につく。新入生たちは、
新たな環境にようやくなじみ始めたことだろう。

今春、小学1年生になった子どもたちの『就きたい職業』は、
男の子は「スポーツ選手」「警察官」「運転手士」、
女の子は「パン・ケーキ・お菓子屋」「花屋」「芸能人・タレント」
がトップ3。人工皮革を製造・販売する会社のアンケート結果だ。

男の子は「ユニホームを着る仕事にあこがれ、女の子は
仕事にも「華やかさ」を求めているようだ。
子どもたちの素直な気持ちが感じ取れる。

一方、親に聞いた『就かせたい職業』は、男の子が「公務員」
「スポーツ選手」「医師」、女の子は「看護師」「薬剤師」
「公務員」が上位を占める。景気低迷を背景に、安定した職業を望む
親心がのぞく。親子の違いが興味深い。

東日本大震災の混乱が続く中でスタートした新年度も半月が過ぎた。
被害に遭い、将来の夢を描けない1年生もいるに違いない。
日本中の子どもたちが『夢』をあきらめることがないよう、
迅速な復旧・復興に向けて大人たちは英知を結集する必要がある。

プロ野球が開幕し、中断しているJリーグも23日に再開する。
プロらしい豪快、華麗なプレーで「スポーツ選手」にあこがれる
子どもたちに夢と元気を届け続けてほしい。

(M.N)

愛犬

悪天候で15匹の犬を置き去りにせざるを得なかった現場に
1年ぶりに戻った。前方に2匹の影。人を見ても近づこうとしない。
置き去りを恨んでいるのか。そうも思ったが、覚えている犬の名前を
片っ端から呼んでみた。

「タロか」の声に、1匹のしっぽがわずかに動いた。
もう一度呼ぶと今度はしっぽを大きく振った。他の1匹はジロと分かる。
1959(昭和34)年1月、日本の南極観測隊が到着した昭和基地であった
カラフト犬、タロとジロの奇跡の生存劇だ。

以上のことは元隊員、北村泰一・九州大学名誉教授の回想だ。
極寒の地でそりを引くカラフト犬は観測隊には欠かせない存在で、
死んだ犬は丁重に水葬された。北村さんは力を込める。
「15匹は単なる犬ではない。南極を生き抜いた戦友だと」。

戦友、この言葉は東日本大震災のペットにも当てはまらないか。
岩手県宮古市の83歳の女性は、津波から逃れる途中、愛犬ハチとはぐれる。
深い喪失感。しかしハチの無事を知ると気分は違った。
「津波で財産が裸になっても、ハチがいてくれれば力が湧いてくる」と。

(M.N)

浦安の前代未聞

県議選の選挙事務を拒否する浦安市と総務省の対立は、
未曾有の東日本大震災で、行政手法の違いが
抜き差しならなくなったと言えなくはない。

市内の4分の3は埋め立て地。大地震であちらこちらから
泥水が噴き出し地面は波打った。液状化現象である。
公共施設の多くが被災し、職員もライフラインの復旧にかかりきりだ。
とても選挙は無理だと浦安市は延期を求めてきた。

統一地方選延期の特例法を作るまでは国も地方も、
選挙どころではないという判断で一致していた。
その適用範囲を、総務省が物理的に影響のある
三県二十市町村に限定して、両者は袂を分かつことになる。

総務省は「多少困難があっても、しなければ法律(公職選挙法)違反
になる」という批判はその通りでも、特例法を制定しなければ
ならない環境のもとではどうか。施設や学校の被災状況を調査し、
千葉県選管の見解、判断を参考に選挙延期の「指定の必要なし」
と総務省。「自分たちの代表を選ぶ民主主義の重要なプロセス。
市はしっかり自覚していただきたい」との判断。

市内の小中学校は同じころに入学式を開く。
「安全に投票できる場所はあるはずだ」。県選管はあくまで
予定通り実施をとの立場だ。互いに歩み寄りの気配はなく、
このままでは当選者を決められない前代未聞の事態となる。

仮に投票所施設が万全で、県や総務省の応援で選挙事務などの
「物理的」な体制は確保できたとしても、有権者の大半が
市を離れていては誰のための民主主義かという根幹が問われると思う。

(M.N)


節電・節約

東日本大震災以降、スーパーなどは通常より照明を落として営業し、
節電に努めている。足を踏み入れた瞬間は暗いと感じるが、
数分もしないうちに慣れる。

多くの店舗や会社、工場等も営業・操業時間を短縮するとともに、
暖房の温度を抑えている。それぞれ経営への影響も
少なくないだろうが、被災地に思いを寄せて痛みを分け合っている。

一般家庭でも同様だ。厚着をして暖房の温度を2~3度
低くしている。こまめな消灯を心掛けるなど、それぞれが
できる範囲で節電に協力していることだろう。

冷蔵庫を点検すれば、数日は困らないだけの食料が
保管されているはず。乳製品やレトルト食品を中心に
品薄傾向が続いているが、不要不急な食料品の買いだめは慎みたい。

地震発生から今日で1か月を迎えた。少し耐える生活を送る中で、
普段、快適すぎる環境下で暮らし、仕事をし、限りある資源を
無駄遣いしていることに気付かされる。

甚大な犠牲の上にだが、大震災は私たち日本人に多くのことを
教えてくれている。日々の生活を見直すきっかけも。
「足るを知る」ことの大切さを心に深く刻みたい。

(M.N)

強い使命感

桜の季節になった。いつもなら浮き立つ気分にあふれる
花見の名所も、今年は華美な演出を控える所も多いようだ。

絢爛(けんらん)、生命力、無常観。桜は人にさまざまな思いを
抱かせる。桜前線は北上し、やがて東日本大震災の被害地に及ぶ。
平穏であったなら、一緒に花見を楽しめたはずの家族や友人を失った
被害者の方たちは「大切な人」を花に重ねることだろう。

自らの命を賭して「大切な人々」を救った人たちいる。
宮城県南三陸町の24歳の女性職員もその一人。
防災放送の業務中、行方不明になったと新聞、テレビで報道された。

自分にも危険が迫る中、津波の襲来と避難を懸命に呼び掛け続けた。
町に響く放送に背中を押され、助かったと住民たちは感謝する。
任務中に殉職したり安否不明となった警察官や消防士の方も多い。

生死がかかった最前線での強い使命感は、国民が一体となって
苦難に挑むようにとのメッセ-ジにも思える。
危機が続く東京電力福島第1原発事故でも、放射能の危険の中で
過酷な作業に取り組んでいる人たちがいる。
困難の連続だろうが、無事に任務を果たしてもらいたいと
祈るばかりだ。

東北の桜は美しく見応えがあるという。
厳しい冬を耐えて迎える春の輝きが大きいからだろう。
今年の花は未来への「希望」であってほしいと願うばかりだ。

震災と統一選

新年度が始まり多くの若者が社会人としての第一歩を踏み出した。
しかし、東日本大震災の影響で入社式や入庁式の中止や延期が相次いだ。
被災地では無念の思いでこの日を迎えた人も多かろう。

家族や友人を亡くし家や職場を失った青年は少なくない。
岩手や宮城では新卒者の内定取り消しや入社延期などで
不安を抱えたままの人もいる。一方、大きな被害を受けた地域の
企業や役所で再建・復興への決意を込めて前を向いて
歩き出した姿が報じられ、ただただ胸が熱くなった。

「人は2回の誕生がある。一つは世に現れたとき、一つは
(職業)生活に入る時」(ルソー)という言葉もあるほど
働くことは大切だ。仕事の確保、特に若い人への手厚い配慮がほしい。

原発事故と合わせ「未曾有の国難」と言う表現が大げさでないほど
被害状況は深刻で甚大だ。こういう時こそ「一人一人の痛みを
全体の痛みとして感じ対処する」政治が求められるのではないか。

地方分権の時代に、自治体レベルでも復興支援にさまざまな
工夫、知恵を出すことが可能だ。
折から統一地方選の前半選挙が告示された。

地域防災などそれぞれの足元の課題が重要な争点だろう。
加えて、選挙が延期された被害地域3県1市の住民を思い、
どう支援できるか、までが論じられるような統一地方選になれば
と願いたい。

(M.N)


子どもは国の宝

  • 2011年4月 1日 14:49

選抜高校野球大会の開会式。立派な選手宣誓だった。
これで、どれだけの被災者がが勇気づけられ、
元気をもらった国民がいただろうか。

選手の多くは1995年の阪神大震災の年に生まれたという。
新しい命を育てた16年の歳月の重みを思った。同時に、
この未曾有の試練から立ちあがる命を育てていく、
あすからの日本に確信を持った。

甲子園の宣誓は、被災地で卒業式を迎えた生徒の答辞とも
重なった。つらさをこらえて復興の力にになると誓った。
「この試練に生きた子らが強くならないわけがない。
大事に育てます」と言った母親の言葉もうれしかった。

「ふるさと」を合唱した卒業式もあった。残酷な自然に対し、
あの山、かの川、の懐かしさをたたえ、父母への感謝を歌った。
震災報道は一人一人に「私たちが今できることは何か」
を問いかけ、「子どもは国の宝」と胸に刻む時間を増やした。
 
苦しみや悲しみを乗り越える若くてひたむきな言葉を聞くたびに、
未来を信じ、歳月の可能性に心が開けていく思いがする。
ふるさとに新しい命が育っていくことを祈り確信したい。

(M.N)
 

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