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スタッフブログ

新首相に期待したい

松下政経塾第1期生の最終面接に勇んで臨んだ青年に
故松下幸之助さんが尋ねた。「身内に政治家はいるか」。
いないと返すと「そりゃええな」。さらに「お金持ちか」と聞かれた。
「中の下です」「なおええな」民の暮らしに寄り添える政治家を
育てていきたかったのだろう。それから30年その青年が次の
首相の座を手中にした。

野田首相の演説のうまさは、政界でも定評がある。
民主党代表選の立候補者演説では「時代小説から多くのことを学んだ」
と切り出した。司馬遼太郎、藤沢周平、山本周五郎。それぞれに、
「夢」「矜持(きょうじ)」「情」を学んだと述べた。

正直な人なのだろう。「このルックスなので首相になっても
支持率は上がらない」「政治に必要なのは夢、志、矜持、人情」だと。
自分をさらけ出しして政治への思いを率直に語られた。

「どじょうがさ金魚のまねをすることねんだよな」。
好きだという相田みつをの詩を引用しながら「ドジョウらしく
泥くさく政治を前進させる」。こうも述べた。

苦労人らしい。演説では、これまで歩んできた道を語ることに
多くの時間を割いた。飾らない言葉や話しぶりからも誠実さが
伝わってきた。しかし代表選そのものは党員や国民そっちのけの
数合わせでしかなかったのが実感だった。

(M.N)

激務からの解放感

役所を退職した知人が訪ねてきた。激務からの解放からか、
顔つきが穏やかだった。丁寧に差し出した名詞には名前と住所のみだ。
「これからは名前だけで勝負です」と説明された。
日本は肩書社会である。職業や地位が明確でないと、
どうも不安でならない。政治家なら出自から丸裸にされる。
でも本来はそんな狭隘(きょうあい)な社会ではなかった。

江戸の町には「三脱(さんだつ)の教え」という作法があった。
粋な生活哲学ともいうべき「江戸のしぐさ」の一つだ。
「三脱」」つまり人を規定する年齢・職業・地位に関し、
初対面の人には聞いてはいけない習わしだった。
当時は身分の差があり武士階級もある。そんな格差を超え、
対等な付き合い方のルールがあったとは驚きだ。
江戸人の心意気と見るが、穏やかな秩序保持の手段だったのだろう。

何事にも先入観は禁物だ。肩書きはその人の「本質」ではない。
米国には雇用で「年齢差別禁止法」があり就職に際し年齢や人種、
宗教、性別を問うことを禁じている。

わが国も雇用対策法で募集・採用時の年齢制限は原則禁止だが、
守られているとは言い難い。人の器や能力を測る尺度を持つこと自体が
格差や差別を生む。管首相が間近に退陣されるが、官邸で開いた
党若手議員らとの会食で「辞めてからのことを考えると、
うれしくて仕方がない」と本音を漏らされたそうだ。
肩書きが重すぎたのか。

(M.N)


天高く

「天高く馬肥ゆる秋」。子どものころ、この言葉を聞くと、
なぜか馬が風船のように膨らんで秋空高く浮かんでいる様子を
イメージした。そうではなく、秋というのは空が遠のいて
すがすがしく、食欲が進み、馬も太る季節なのだ。
と理解したのはずっと後年のことである。ところが、
これも正解ではなかったようだ。
 
「ことわざなるほど雑学辞典(PHP文庫)によると、
ことわざは中国からの伝来らしい。中国は古来、
北方の匈奴(きょうど)という騎馬民族に悩まされてきた。
春から夏にかけて豊富な草を食べた馬は、
秋には一段と元気になり、それに乗って匈奴が攻めてくる。

つまり、また注意すべき秋が来た、という危険信号の意味が
あったという。現代風ののどかな理解とは真逆の緊迫感が
うかがえる。しばらくの間、秋の到来を感じさせる青空を
見るのは難しそうだが、政界はいよいよ秋の陣が幕を開けたようだ。
東日本大震災のために延長した国会も党利党略、
派利派略ばかりが目立って、肝心の対策は後手後手に回った。

与野党そろって「国民の皆さん」を枕詞にした、
いかにも国会議論はもう聞き飽きた。今度はどんな内閣が
できるのだろうか。少なくとも安心して物が食べられる
食欲の秋になってほしい。


(M.N)


「涙は「女性の武器」と言って批判を浴びたのは、
小泉純一郎元首相だった。10年前、当時の田中真紀子外相が
外交問題への鈴木宗男衆議院議員の関与を涙ながらに訴えた
のに対し、先の発言となった。

涙が「女性の武器」かどうかは知らない。では「男の涙」は
どうだろうか。先の衆院経済産業委員会で早期辞任を求める
自民党議員の質問に「もうしばらくこらえてください」と、
泣き崩れた海江田万里経済産業相が思い浮かぶ。

洋の東西を問わず、指導者の資質の一つは強さといわれる。
ひるがえって、弱さは最大の欠点だ。人柄がにじみ出る涙は
いいとしても、国会で政治家が手で顔を覆い、肩を震わせて
泣いたのはどうか。

原発の再稼動問題などをめぐる菅直人首相との確執は
かねて言われてはいたものの、国会で泣くのはいただけない。
この人に国を任せて大丈夫かと、心配になった。

管首相の後継を選出する民主党代表選が今月中にも
行われるようだ。震災から立ち上がるために国をどう導いていくのか。
各候補は堂々と政策論議を戦わせてもらいたい。
海江田経済産業相も泣いているときではない。政治のふがいなさに
涙しているのは国民であり、とりわけ被災者であることを
忘れてもらっては困るのだが。


(M.N)
 

連帯と分かち合い

終戦直後、進駐軍の通訳をしていた日系人が
東京のガード下で靴磨きの少年に出会った。靴を磨いてもらい、
年を聞くと7歳という。あまりにかわいらしいのでチップを弾んだ。

宿舎で食事の時、白い大きなパンを見て思いついた。
よし、これもやろう。おなかが空いているだろうから喜ぶはずだ。
パンをはんぶんにちぎって、たっぷりバターを塗り、再び
ガードしたに行って「これもあげるよ」と勧めた。

すると少年は「さっきはお代以上に頂きました。もうこれ以上は
受け取れません」と言う。「君のおなかが空いているだろうと思って
家から戻ってきたんだ。どうか受け取ってくれないか」と頼んだ。

少年は「そこまで言われるのでしたらありがたく頂きます」と
受け取った。すぐにパクつくと思っていたら、風呂敷を出して包み込む。
「どうするのか」と尋ねると、「家に3歳の妹がいます。
これを食べさせてあげたい」と顔をほころばせた。

通訳の日系人はそのとき思った。下手をすればナイフを取り出す
ニューヨークの靴磨きとは大違いだ。敗戦で悲惨な状況なのに、
こんな小さな子供でも誰かを思いやっている。この国は必ずや
どん底から立ち直れる、と
 
東日本大震災復興構想会議議長の五百旗頭真(いおきべまこと)さんが
講演会で引用した話だ。阪神淡路大震災の被害者でもある五百旗頭さんは、
敗戦からの復興を例に、国民全体の連帯と分かち合いで
復興を進めることが重要だと力説されている。

(M.N)

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