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ツバメの困惑

ツバメを主人公にした逸話がある。
昔、ツバメとスズメは姉妹だった。
ある時、親が危篤という知らせを聞いて
スズメはなりふり構わず駆け付けたが
ツバメは紅をさしたり、着飾ったりしていたため
親の死に目に間に合わなかった。

そこで神様は、親孝行のスズメに米や麦など
五穀を食べて暮らせる特権を与えたが、ツバメには
虫しか食べさせないようにしたという。
それぞれの外見や習性の違いから生まれた面白い逸話である。

この話にある通り、ツバメは
稲作の大敵である虫を捕ってくれる。
だから益鳥として、古くから人々に大事にされてきた。
春先に南方から飛来すると、すぐに民家の軒先に巣を作る。
人々は「ツバメの来る家は栄える」と言い伝え
家族の一員のようにして営巣から、巣立ちまで
温かく見守ってきた。

そのツバメが今、苦しい立場におかれている。
民家の構造が変わって巣作りをする場所が少なくなり
屋外や駐車場の軒先に追いやられているからだ。
野鳥に詳しい知人によると
一回り体の大きなヒヨドリに襲われたり
カラスや蛇に卵を奪われたりして
ツバメの巣立つ率が激減しているという。

これを自然の摂理と見るか、都市化の悲劇と見るか。
初夏の青空を飛び交うツバメの姿が次第に見えなくなると聞くと
田舎に住んでいた少年時代に、毎年
家の軒先に巣作りしていた親ツバメが                                     ヒナに餌をやる姿を思い浮かべ、寂しさが募ってきた。

(M.N)

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