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母の手紙

野口秀世(1876~1928年)の母シカが
米国の研究所にいる息子英世に書き送った手紙。
魂を揺さぶられるような文字で綴られている。

福島県・猪苗代湖の近く、生家に隣接して立つ
「野口英世記念館」に展示されるその手紙。
1度読んだぐらいではとても判読できない仮名ばかりの手紙。
まるで文字を覚えたての幼児が書いたようなたどたどしさ。
句読点のルールも完全に無視されている。

「おまイの。しせにわ。みなたまけました。はるになるト。
みなほかいドに。いてしまいます。わたしも。こころぼそくありまする。
ドかはやく。きてくだされ。はやくきてくたされ。いしよのたのみて。
ありまする(中略)」

お前の出世にはみんな驚いている。春になるとみんな北海道に
行ってしまう。私も心細い。どうか早く帰ってくれないか。
早く帰ってきてくれ。一生の頼みだー。結びは
「いつくるトおせて(教えて)くたされ。これのへんちち(返事を)
まちておりまする」

異国で研究に励むわが子の成功を喜び、一度でいいから
その帰りを待ちわびる母の愛情がにじみ出ている。
英世を思うシカの愛の深さ。すごみさえ感じられる名文といえようが、
精いっぱいに覚えたであろうその文字にも目頭が熱くなる。

シカは自分の不注意で幼いわが子に一生消えないやけどを
負わせたーと自分を責め、食うものも食わないような極貧の中で
息子の学費を工面したという。それに応えて英世は、上京する時に
「志を得ざれば、再び此の地を踏まず」という決意を柱に刻んだ。

この母にしてこの子あり。今、、まさに受験シーズン。
時代はさかのぼるが、こんな母子の姿を思えば、
ぐっと力も出てこようというものだ。あと一息、がんばれ!

(M.N)

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