Home > M.N氏の岡目八目 > 故事ことわざ

故事ことわざ

人生とは、ままならず、じれったいものである。
故事ことわざで言えば、「寸進尺退」といったところか。
「手元の辞書によれば、すんしんしゃくたい、と読む。
「一寸進んで一尺退くこと。得るところが少なく、
失うところが多いこと」をいう。

寸(すん)や尺(しゃく)を使った故事ことわざには
「寸善尺魔」もある。すんぜんしゃくま、と読む。
「世の中には、よいことはほんの少ししかなく
、悪いことの方がずっと多いこと」とある。太宰治の小説
「ヴィヨンの妻」の名文は、こう語る。「人間の一生は
地獄でございまして、寸善尺魔、とは、まったく本当の事で
ございますね。一寸の仕合せには一尺の魔物が必ず
くっついてまいります」。

さて、今の世の中、どれほどの人が寸や尺を
知っているだろうか。ピンとこない人が、大勢を占める。
若い世代に至っては、「寸や尺って、なあに?」といった
ところであろう。

寸や尺は、尺貫法(しゃっかんほう)の単位。
重さは貫(かん)で量った。一寸は約3センチ、その10倍
の一尺は約30センチ。一貫は3,75キロである。
太宰の作品の中にも「戸が二,三寸あいている」とか、
「二寸ばかりの高さ」などの表現が出てくる。メートル法に
取って代わられるまで、暮らしの中では尺や寸などを
使うのが普通だった。

名文は時代を超えて、後世の人に読み継がれる。
とはいえ、現代人は「寸善尺魔」「二、三寸」という言葉を前に
立ち止まって、頭の中で換算をする。太宰がもし
生きていたなら、さぞかし、じれったく思ったに違いない。

Home > M.N氏の岡目八目 > 故事ことわざ

Search
Links

ページ上部へ戻る