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法隆寺の宮大工

法隆寺の宮大工棟梁の嫡孫として生まれたのに、小学校を出ると
農学校に入学させられ、そこを卒業すると農作業をさせられた少年がいた。
少年は、のちに法隆寺の昭和大修理と薬師寺の伽藍(がらん)の復興に
生涯をささげた。

「鬼」とも呼ばれた棟梁西岡常一さん(1908~1995)のことだ。
「土に学べ」と言われて育った。自然が土をはぐくみ、土が木を育てる。
それを肌で知り、「木と話す」ことができるようになった。

木は教えてくれる。同じ山の木でも太陽や風の当たり具合で木質が違い、
ねじれなどの癖も異なる。木質に合わせて柱や桁(けた)などに使い分け、
木の癖に合わせて組む。

晩年のドキュメンタリー映画「鬼に訊(き)け)(山崎祐二監督)ができた。
森林国日本の文化が生んだ"木のいのちのつなぎ方"を次世代に伝える
熱い語りに、観客の背筋はおのずからしゃんとなる。そんな映画だった。

法隆寺に使われたヒノキは薄く削ると芳香が漂うという。大修理の際は
樹齢千年余のヒノキを求めて台湾に行った。樹齢と同じ歳月を、
建ててもう一度生かす日本の技を、自国の材料で継げない現実も
映画は伝えている。

川崎市アートセンター(川崎市麻生区)で上映された。見終わって、思う。
木の質や癖に合うよう使って組むという言い方は人間社会にも通じる。
最後に棟梁は言われる。「間違ったら棟梁が腹を切るんやから、
恐れずにやってもらいたい。ごまかしでないほんまの仕事を」

ジェクト株式会社の創立者、現社長祖父から、棟梁としての話しの中
から訊いた「魂」をこの映画から懐かしい面影と言葉を思い出したことを、
現社長に語ったところである。

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