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アスリートたちの支えになる言葉

物事の引き際ややめる際には
その人の考え方なり生き方なりが凝縮して
表れることが少なくない。
スポーツ選手は人目に触れる機会が多いせいか
特に強烈な印象を残す。

「巨人軍は永遠に不滅です」。好き嫌いを超えて
プロ野球の長嶋茂雄さんの現役引退はドラマチックだった。
戦後最大のスターにも不滅の体力は備わっていなかった。
衰えながらも最後まで魅力的なプレーに挑み続ける姿に
多くの人が酔いしれた。

テニス会でも12年前、ショッキングな引退劇があった。
世界のトップクラスにいながら二十六歳で現役を退かれた
伊達公子さんである。絶頂期に余力を残したままコートを去る。
それが彼女なりの「美学」だったと推測する。

その彼女がクルム伊達選手となってカムバック。
復帰後初大会の複で優勝。シングルスでは東京有明
国際女子オープンで優勝。観客数が大幅に増えたのも
現役時代の人気に加え、やめ方の鮮烈さも
手伝ってのことに違いない。

スター選手がスターであるのは
ここぞと思う時に期待にたがわぬ働きをし
しばしであれ夢心地にしてくれるからだ。
長嶋さんが、かって何度も奇跡を起こしたように
伊達さんも世界を相手に幾度スーパーショットを
放ったことだろう。

何より伊達選手の復帰は
「若手選手に刺激を与えたい」「人生を楽しむ」
ということが報道された。
若い人と一緒に「まだまだやれるよ」というメッセージに
思えてならない。挑戦する大切さを教えてくれた。
12年前との大きな違いは、伊達選手の笑顔だ。
かって世界ランキング四位という時期には
いつも緊張の表情がテレビに映し出された。

サッカー日本代表の前監督イビチャ・オシムさんが
元気になって戻ってきた。昨年十一月に脳梗塞で倒れ
日本サッカー協会の会長が「命だけは取り留めて・・・」と
涙で語ったのも思い出す。

復帰後の記者会見でオシムさんは
「向こう側の世界まで行って戻ってきた。
私がやり始めた仕事は完成していない。
その思いが復帰を後押しした」と語った。
これからはアドバイザーとして
日本のサッカーを脇から支えてくれる。

監督時代に残した言葉も支えになる。
「アイデアのない人間でもサッカーはできるが
サッカー選手にはなれない。
後ろの6人で回してどうするんだ。
リスクを冒していかないと未来は開けない。」
「人生も同じだ。」
オシム語録は組織論、教育論にも転用が利く。
冗舌だが軽くなく哲学的でさえある言葉でファンを魅了し増やした。

こんなアスリートたちが身をもって伝えてくれたことが
無性に応援したくなるゆえんである。

(M.N)

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