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大壁画

「芸術は爆発だ」。こんな言葉を残した画家の
故岡本太郎さんの記念館が東京都内のJR渋谷駅近くにある。
住居兼アトリエとして使われた場所だ。

展示物の中にはピカソと談笑する一枚の写真があった。
南仏のアトリエを訪ねた時に撮影されたものだそうだ。
岡本太郎さんが近代美術の頂点とたたえる
名画「ゲルニカ」をめぐり芸術論を交わしたと伝えられる。

それから十五年後の一九六八年、岡本太郎さんは
メキシコの実業家の依頼で「明日の神話」と題した壁画を作成した。
原爆投下の瞬間をモチーフした縦五・五メートル、
横三十メートルの大作だ。
戦争を告発するテーマ性などからゲルニカを意識されたのだろう。

作品は展示予定のホテルが倒産したため
完成直後に行方が分からなくなった。
それが五年前にメキシコ市郊外の倉庫から発見された。
日本に運び修復された壁画は,JR渋谷駅の連絡通路に
昨年十一月中旬に設置された。

一日約三十万人も行き交う雑踏の中
壁画の前で若者やサラリーマンらが立ち止まり
シャッターを押す姿を見た。
目を凝らすと炎の中から天井を目指して
躍動する生き物が描かれているのに気付いた。

人間は原爆の惨劇を乗り越え
必ず明るい未来を築くことができる。
岡本太郎さんが壁画に託した人類再生のメッセージである。
その願いが時空を越えて語り継がれて欲しいと思った。

(M.N)
 

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