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大海にこぎだす船乗りの仕事は常に危険と隣り合わせだ。
昔から「板子一枚下は地獄」という言葉で伝えられてきた。
私たちが日々豊かな海の幸を味わえるのも
命がけの仕事のおかげである。

それだけに船乗りは強い絆(きずな)で結ばれている。
漁船の遭難事故の都度、行方不明の仲間や
家族を気遣う漁師たちの思いやりは心にしみる。
昨日、八丈島近海で連絡が途絶えていたキンメダイはえ縄漁船
「第一幸福丸」が見つかった。
4日ぶりに3人救出という奇跡的な朗報と船長の悲報に
海の男たちの胸中は喜びと悲しみが交錯したのではないか。 

それにしても、転覆した漁船の船内から良くぞ生還してくれた、と思う。
3人は、救助のへりから降りた後、八丈島で待機していた救急車まで
歩いたそうだ。脱水症状はあるが、健康状態に問題はないという。
転覆した船内のわずかな空間で、救出を信じて
ひたすら待ち続けていたのだろう。本当によかった。

一方で、亡くなった船長の家族や関係者の悲しみを思う。
佐賀県から駆けつけた母親が、「息子が船員を守り
全員無事に帰すと信じている。そういう息子に育てたつもり」
と気丈に語っていたことを思い出す。

船が連絡を絶つ直前、幼馴染の同級生は
船長と船舶電話で話をしていたそうだ。
話の中で、船長は新しい船を調達したい、と夢を膨らませていたという。
それも、かなわない夢となった。残念だ。

しかし、残る4人の乗務員は行方不明のままである。
今も海上保安庁や僚船など、約束の固い海の男たちが
全力を挙げて捜索している。何としても生還を、と願っている。

(M.N)

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