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美術館

らんまんの桜色に代わって、若葉が枝々に広がり、
空を大きく覆う。萌(も)え出る多彩な新緑に吹く風が
染まり、心地良い。初夏のすがすがしさ、軽やかさ。

移ろう季節の中、燕子花(かきつばた)が見ごろを迎えていた。
訪ねたのは、コレクション展を開催中の南青山の根津美術館。
尾形光琳筆の国宝「燕子花図屏風」を中心に館蔵品が展示され、
日本庭園にも燕子花が咲き競う。

金地に群青と緑青のみでリズミカルに描かれた六曲一双の屏風は、
右隻と左隻の構成や微妙な濃淡の違いを楽しめる。
鑑賞後、起伏のある庭園を散策しながら都会の一角とは思えない
豊かな自然も満喫できた。

当初、「燕子花図」と米メトロポリタン美術館所蔵「八橋図」の
光琳による二つの金屏風が並ぶ予定だったが、震災の影響で
来春に延期になった。残念な思いをした人は多いはずだ。

地震と福島第1原発事故後、欧米から借りる巨匠の優品を
目玉に据えた企画展の開催中止や展示内容の変更が各美術館で
相次いでいる。海外の関係者が、日本への作品貸し出しに
難色を示したためだった。

「燕子花図」と「八橋図」は同じ伊勢物語を題材とし、
人物の描写こそないものの東国に下る途中の在原業平が都をしのんで
歌を詠む場面。大正時代、日本とアメリカに離れてから2作品は
一度も出会うことがなかった。100年ぶりの再会を待つ光琳画が
郷愁を誘った。

(M.N)

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