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親と子

大正初期、ある小学校の昼食の時間に、弁当の包みを開いた少年が、
間違って山仕事に行く父親の弁当を持ってきたことに気づいた。
家は貧しく、いつも弁当で満腹になったことがない。
お父さんは力仕事だからご飯がいっぱいに違いないと思っていた。

ふたを開けて驚いた。ご飯がいつもの自分の弁当よりはるかに少ない。
これっぽっちのご飯であんなに激しい仕事をしているのか・・・。
少年は衝撃を受けた。

自分には干し魚がおかずに入っているのだが、その弁当は
生味噌と梅干が1っ個だけ。「これがお父さんの弁当だ」。
少年は胸が詰まり一粒も残さず食べた。

晩ご飯の時、帰った父親が「お前、弁当箱を間違えて
おなかが空いただろう」と、茶碗からご飯を分けてくれた。
翌日、少年は親友に「夕べは眠れなかった。この親に
心配かけちゃいけないと決心した」と打ち明けた。
少年はそれからぐんぐん成績を伸ばしたそうだ。

親友とは『梅干と日本刀』で有名な考古学者の樋口清之先生だ。
その樋口先生の思い出を僧侶の松原泰道さんが『輝いて生きる道』
(致知出版社)で引用されている。

親としてどうあるべきかを心得て、そのように生きる姿を
みせることに勝る教育はない。と松原さんは語る。
子を育て、生徒を導くには、押し付けがましくなく、
料理の隠し味のようであるべきで、徳行もまたそのような
ものだと説いていられる。親の心子知らずでは、身勝手な
ふるまいで時に踏み外すこともあろう。

(M.N)

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