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景気

暮れの大みそかに珍しくテレビで落語をやっていた。
しかも立川談志師匠の「芝浜」だった。一昨年亡くなった師匠が
十八番にしていた演目である。酒好きでうだつの上がらない
魚屋とその女房。浜で拾った大金を女房から夢だと思い込まされた。
一念発起して断酒。店をもてた3年後の大みそかに
真相を明かされるという人情噺だ。

師匠の工夫は、偉ぶらない女房の演出。「おまえさんに
あたしァうそをついたんだよ。腹がたったら、あたしをぶつなり、
けるなりして、それで勘弁しておくれ」と、涙ながらに謝罪
する場面は胸にぐっとくる。

と、いい気持ちになって新年を迎えたら、世の中は株の話で
持ちきりになった。週刊誌には「2万円」の見出しも載っていた。
「今度の参院選までかな?」「来年の消費税増税までは
頑張るでしょう」。円安とともに期待を込めながらも、
まだ恐る恐るといった感じだろうか。

何しろこの株高円安は、まだ実体が伴っていない。
それでも景気は気からという。政権交代で気が変わり、政治家の
「口先介入」もあった。麻生太郎財務相は年末に財務省で、
「株価が1万5千円にもなれば、何となく気持ちが豊かになる」と
数字を挙げて訓示したものだ。

相場のことは相場に聞け、という。考えても考え切れるものでは
ないということだろう。「芝浜」では、女房から酒を勧められた魚屋が
口に近づけた杯をふいに置く。「よそう。また夢になるといけねえ」。
落語の落ちを反すうしながら、3年後の日本を想像してみた。

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