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2011年1月 Archive
サッカー・アジア杯
- 2011年1月28日 10:40
- M.N氏の岡目八目
「悲劇」の地を「歓喜」の地に半ば変えた。
サッカーファンが悲劇の舞台として語ってきた中東カタールの
首都ドーハが、歓喜の舞台として語られようとしている。
1993年のドーハでの対イラク戦で、日本は終了間際に追いつかれ、
引き分けた。ワールドカップ(W杯)米国大会のアジア最終予選でのことだ。
勝っていればW杯初出場が決まっていた。「ドーハの悲劇」と呼ばれる。
そのドーハでは今、アジア王者を決めるアジア杯が行われている。
勝ち進んだ日本は準決勝で韓国に勝った。最後までドキドキした。
韓国には5年半も勝っていなかった。深夜の中継にも
かかわらずテレビの平均視聴率は35%もあったそうだ。
あらためて振り返ると、日韓戦では悔しい思いばかりをさせられてきた。
力は少なくとも互角のはずと専門家は言うのに、終わってみれば
笑顔はいつも韓国の側にあった。気持ちで負けていたような
ところも感じられた。
昨年のW杯でベスト16に進出して一皮むけたようだ。
若い選手が出てきた。気持ちが強くなった。絶望的な状況でもめげない。
今大会でも、反則退場で1人少ないうえに1点負けている試合を
ひっくり返したことがあった。
半ば、が取れるか否かは決勝戦にかかっている。
オーストラリアも手ごわい。選手がエネルギーを使い果たしていなければ
いいのだが・・・。そう思わせるくらいに力の入った韓国戦だった。
(M.N)
二重被爆
- 2011年1月26日 18:00
- M.N氏の岡目八目
チャーチル元英首相の名言が思い出される。
「築き上げることは、長年かかる骨の折れる仕事。
でも破壊するのは、たった一日の思慮のない行為で足りる」。
まさに地でいくような出来事というほかあるまい。
広島と長崎で二重被爆した山口彊(つとむ)さんを
「世界一運が悪い男」とお笑いテレビ番組で
ジョーク交じりに取り上げた英BBC。
きのこ雲の写真を掲げたスタジオから笑い声が上がる。
「不適切な無神経」と日本大使館が抗議したのは当たり前だ。
BBCといえば、核問題を取り上げた優れた番組制作で知られる。
7年前には取材クルーが広島県内に滞在。原爆投下をテーマにした
ドキュメンタリーを撮影した。被爆者の声を聞き、平和記念式典にも
レンズを向けた。
今回は娯楽番組とはいえ、きのこ雲の下で起きた惨状に
思いが至らなかったのだろうか。BBCは「不快な思いをさせて申し訳ない」
と慌てて謝罪。原爆に対する日本人の敏感さに理解が足りなかった
との弁解を聞いても、釈然としない。
「うち重なり焼けて死にたる人間の脂滲(にじ)みし土は乾かず」。
昨年93歳で他界された山口さんは被爆体験を数多くの短歌に
残していられる。戦後は通訳や教師を務めるほど、
英語にも堪能だったそうだ。その言葉にしっかりと耳を傾けてほしい、
これからでも。
(M.N)
受験生の君たち
- 2011年1月25日 20:25
- M.N氏の岡目八目
知人の長男に元気がない。先日行われた大学入試センター試験。
思ったより出来が良くなかったらしい。進学塾に採点結果を提出し、
志望大学の予想判定待ちだという。
まじめに努力してきたことを知っているだけに励ましてやりたいところだが、
家族は入試の話題を避けている様子。受験を何度も経験した"先輩"として
「大丈夫。何とかなる」などと安易に声を掛けることは控えた。
彼は難易度の高い「国立理系」が第一志望。
本来は文系科目が得意なのにもかかわらず、就職「新氷河期」を
踏まえてのことだ。二次試験を前に浪人も覚悟しているらしい。
周囲への気配りを忘れない優しい君よー。受験は人生の一大事。
緊張も強いられ、普段の明るさを失ってもやむを得ないかもしれない。
しかし、スピードスケーとで冬季五輪に5度出場した岡崎明美さんは、
著書「挑戦力。」の中で「もがき苦しみながら、挑戦しなければ進歩は
ない」と記している。
幼少時代からスポーツ万能の岡崎さんが、唯一苦手な競技がスケートだった。
努力しても簡単には上達しないハードルの高さが、逆に「やる気に火を付けて」
息の長い一流選手へと成長させた。
もがき苦しんでいる受験生の君たち。今は成長できる好機と考えて,
結果がどうあれ、これまでの努力は決して無にならないし、後になれば
「人生の一大事」というほどのことではなかった、と笑って話せる時が来るから。
(M.N)
芥川賞
- 2011年1月22日 12:35
- M.N氏の岡目八目
新人作家い与えられる「芥川賞」に個性的な2人が選ばれた。
芥川賞も時間の問題と前評判が高かったらしい朝吹真理子さん(26)と、
「万に一つも受賞の可能性はないと思っていた」と言う
西村賢太さん(43)。好対照な新星である。
作品の世界が違うのは当然だが、会見で与える印象、
さらに経歴も両者個性を放つ。文学一家で育った女子大学院生と、
複雑な家庭環境に育ち中学卒業後フリーターで生計を
立ててきた男性。その2作品を選んだ芥川賞は
話題作りがうまいのか懐が深いのか、とにかく目を引く
選出である。
折りしもこんなニュースが流れる。大学生の就職内定率過去最低。
まだ3割以上が未定で、大氷河期なる言葉も出始めた。
一方で婚活に疲れ果て、精神科外来を訪ねる「婚活うつ」の増加が
ささやかれる。そんな中だからなのか、受賞する2人の
こんな言葉が印象深い。作品への思いである。
「小説は読み手の『あなた』に向けた愛の小包」(朝吹真理子さん)、
「自分より駄目なやつがいるんだなという気持ちになってもらえれば」
(西村賢太さん)。どんな人を想定した言葉か分からないが、
消耗戦で疲弊しがちな時代。聞きようによっては、
元気出してと声援のように聞こえないだろうか。
一方の直木賞も木内昇さん(43)、道尾秀介さん(35)の
2人が受賞した。計4人の受賞は7年ぶりだ。
何かと話題の多い今回の受賞作、活字離れにくさびを打ち込めるか。
(M.N)
鉄道ダイヤ
- 2011年1月19日 21:26
- M.N氏の岡目八目
鉄道のダイヤをつくるような運行管理に携わる人を、
その世界では「筋屋(すじや)」と呼ぶらしい。
旧国鉄時代など、ダイヤ改正時には、すばらしい筋屋が
各鉄道管理局から集まり、駅と時間を示した大きな図に
定規を当て、列車運行を示す「筋」を引き合ったらしい。
乗り継ぎを良くしたいなど、それぞれに主張があるため、
結構、激しくやりあったのだと、以前、元国鉄マンに
聞いたことがある。
ダイヤというと、時刻表を思い浮かべる人も多かろうが、
ダイヤグラムという語の本義も「線図」。
筋屋とは、だから実態に即した呼び名なのである。
もっとも、今のダイヤ編成は、ご他聞に漏れず、
コンピューターが活躍しているそうだが。
さて、先日は広い範囲で、その鉄道ダイヤが乱れた。
東海地方は常ならぬ大雪が続いたため。
さらに東北、長野など五つの新幹線が一時、運行できなくなった。
こちらは,JR東日本の運行管理システムのトラブルが原因。
荒天と機械の不調はダイヤを乱す二大原因だろうが、
それが二つながら発生したわけだ。大変な数の客が影響を受け、
裁判官が間に合わず、裁判開始が一時間遅れたケースも
あったそうだ。
通常ダイヤ回復までの運行は一種の修羅場だろうが、
JRによると、そういう時は手作業で「筋」を引き直すのだそうだ。
いざという時は、やはり、人なのである。
(M.N)
野球殿堂入り
- 2011年1月18日 07:59
- M.N氏の岡目八目
「本当のプロ意識というものを教わった」。
プロ野球・西鉄黄金期のエースで「鉄腕」と呼ばれた
故稲尾和久さんが、ある選手の現役引退の際にこんな言葉を
スポーツ紙に寄せられた。
その選手とは、中日監督の落合博満さんだ。
稲尾さんがロッテで監督を務めていたころ、落合さんは4番打者。
稲尾さんの言葉は、プロとして胸を張れる結果を残すため、
人知れず努力を重ねていた後輩への最大の賛辞といえる。
落合さんの野球殿堂入りが決まった。野球人にとって
最高の名誉の一つである。実績からすれば当然のこと。
なのに一昨年も昨年もあと1票が足りず落選。
ファンの一人として気をもんでいただけに、ようやく
気分がすっきりした。
成績はすばらしいの一語に尽きる。プロ入りが25歳と
遅かったにもかかわらずロッテ、中日、巨人、日本ハムと
渡り歩いた20年間で通算2371安打を放ち、首位打者、
本塁打王、打点王をそれぞれ5度獲得。
三冠王に3度も輝いた。
指導者としての手腕も見逃せない。4年前に中日を
53年ぶりの日本一に導き、昨年は監督になってから3度目の
リーグ優勝を果たした。選手の育成に定評があり、
大型補強に頼らず現有戦力の底上げに力を入れている。
笑顔を振りまくタイプではない。仕事に徹する職人との印象が強い。
その落合監督が「感謝の思いでいっぱい」と率直に喜びを
表現しているのがうれしい。野球は天職なのだろう。
これからも球界の活性化に力を尽くして欲しい。
ロッテ時代にいただいたサイン入りボールを大切に
机上に飾っている。
(M.N)
薮入り
- 2011年1月17日 10:33
- M.N氏の岡目八目
古典落語の「藪(やぶ)入り」に出てくる熊さんは、
奉公に出した息子が3年ぶりに帰ってくることが
うれしくてたまらない。あれこれ考えて寝れずに朝を迎えた。
すっかり成長した姿を目にした熊さんは、
びっくりするやら感極まるやら。その息子の財布に大金が
入っているのを見つけ問い詰めるとネズミを捕まえた褒美や
捕まえたネズミの懸賞での賞金ということだった。
預けていた店の旦那から「里の親に渡してこい」と言われて返され、
持参したとの話。感激した熊さんが「これからもご主人を大切にしなよ。
これもやっぱり忠(チュウー)のお陰(かげ)」と言うオチがつく。
江戸時代、商家の奉公人は初めの3年は里帰りを許されなかった。
それが過ぎると1月と7月の16日の年2回は休みを得て
実家に帰ることができた。この休日を「薮入り」といった。
語源は諸説あり、定かではない。
子が社会人になっても親が面倒を見続けるケースが多々ある
現代とは違い、その当時の庶民の子は幼さが残るうちから
世の荒波にこぎ出さなければならなかった。
いやがおうにも成長せざるを得なかったわけだ。
落語では、とんちんかんながらも子への愛情にあふれる父親を中心に、
それを暖かく見守る女房、立派に育った息子の真情が語られる。
もしや今よりいい時代だったのかもしれない、と「薮入り」の日に思う。
(M.N)
成人の日
- 2011年1月10日 15:47
- M.N氏の岡目八目
平安末期、栄華を極める平家の滅亡を夢見て
ひたすら剣術の稽古に励む少年が京の鞍馬にいた。
遮那王(しゃなおう)といい幼いころは牛若丸、
後に源義経を名乗った。
奥州に向かう稚児姿の遮那王は追っ手を察知、
烏帽子(えぼし)を着けた大人の東男に身をやつす
ために急遽(きゅうきょ)、前髪を切って元服することにした。
近江国・鏡の宿で自ら元服式を行い、家門再興と武運長久を
祈った。(滋賀県竜王町観光協会案内)
源氏の総領家に生まれながら、不遇な幼少期を送った義経だ。
元服を後見する2人の烏帽子親はおらず、太刀と、脇差しを
それに見立てた。このとき16歳。
大人になる道は死と隣り合わせで、さぞ険しかったろう。
現代の成人式の原型は男性に兵役が課された明治時代にあり、
徴兵検査が大人への入り口だった。
戦後、国民の祝日として1月15日と法律で定められた。
2000年からは1月の第2月曜となったので
今年は明日10日が成人の日だ。
けなげにもひとりで元服の儀式を終えた義経は、
平家を次々と打ち破るたくましい武士となった。
決してたやすくはない現世に大人になる若者たちも、
強い意志を持って自らの道を切り開いていってほしいと願いたい。
(M.N)
血沸き肉踊る
- 2011年1月 7日 20:18
- M.N氏の岡目八目
正月は箱根駅伝をテレビで観戦するのが恒例行事になっているが、
今年も選手の快走に拍手を送り、順位が入れ替わるたびに一喜一憂した。
1920年に始まった箱根駅伝は、今年で87回を迎えた。
往路と復路の計10区間、200キロを越す起伏に富んだコースが生む
筋書きのないドラマが、長く人々を引きつけてきた。
駅伝の醍醐味は、一本のたすきに熱い思いを込め、
懸命に受け継いでいくことにある。
「天の時は地の利にしかず、地の利は和にしかず」の精神だ。
そのために厳しい練習を重ね、全員の心を一つにする。
それにしても往復路10区を10人の選手が継走する駅伝というスポーツは、
孤独と重圧に耐えながらひたすら走り続けることを要求され、
しかも行く手に何が起こるか分からないという点で、
これほど辛く苦しい競技はあるまい。
不測の事態が起きて不調に終わった選手の思いがどんなものか、
まったく気の毒としかいいようがない。
今年は早大が18年ぶり13度目の総合優勝を果たした。
昨秋の出雲全日本選抜と全日本に続き、大学駅伝3冠に輝いた。
箱根3連覇を目指して激しく追い上げた東洋大とのデッドヒートが、
沿道を沸かせた。
シード権を賭けた4校の10位争いが復路に華を添えた。
コースを間違えた国学院大の選手が、それでもダッシュして
みごとシードを手にしたのはあっぱれという他はない。
(M.N)
金のなる木
- 2011年1月 4日 15:00
- M.N氏の岡目八目
江戸幕府を開いた徳川家康がある時、家臣に向かって
「金のなる木を知っておるか。知らぬなら教えてやろう」と言い、
しょうじ木(正直)、じひふか木(慈悲深き)、よろずほどよ木
(よろず程よき)の三つを示した。
さらに家康は家臣らに「ほかにもあるはずだ」と問い、
いさぎよ木(潔き)、しんぼうつよ木(辛抱強き)、ゆだんな木(油断なき)、
ようじょうよ木(養生良き)、あさお木(朝起き)などを挙げさせて、
三つの木の左右の枝として描いた。
言葉遊びのたぐいではあるが、いずれも人として
身に付けておきたい資質や健康の大切さなどを教えるものばかりだ。
家康は、金のなる木は人の心の中にあるとして常日ごろから
こうした事柄を守り、心掛けている人には自然と声望が集まり、
運気も呼び込んで「必ず富貴を得られよう」と言った。
現代の若者はキレやすく、仕事が長続きしないなど、
感情のコントロールや忍耐が足りないと指摘されることが多い。
心の中の「しんぼうつよ木」が十分育っていないからかもしれない。
また、振込み詐欺など言葉巧みに人をだます犯罪が後を絶たないのは、
世の中から「しょうじ木」が減り、「よくふか木(欲深き)」が増えているから
であろう。われわれも「ゆだんな木」を心掛けておかねばならない。
新しい年を迎えた。家康の言葉を借りれば、
今年こそ「よろずほどよ木」1年にしたいものだ。
(M.N)
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