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日本の伝統を守ろう

立川志の輔(たてかわしのすけ)さんが高座で披露したあいさつは
実に楽しい。さすが当代一の売れっ子落語家だ。

「ようこそ皆さま」と口を開き、「といっても、私の方が遠くから
来たんですが」。言われてみれば、その通り。仕事とはいえ、
多忙な中で足を運んだ人をねぎらうのは、客の方だろう。
何気ないやりとりに、「おかしみ」を見つける柔かな発想が光る。

志の輔さんの師匠は立川談志さん。落語界で一派を立てた
異端児が、才能ある弟子を育てた。その談志さんの「師匠は
損な役回りというボヤキを著書で読んだ記憶がある。

弟子に芸を教える。身の回りの世話をさせるが、「授業料」はなし。
時には小遣いを与える。「学校教育」とはあべこべである。やがて、
師匠をしのぐ弟子も出る。ただ飯(めし)を食わせ、飯のタネを
争うライバルを育てるのが師匠の役割なのだ。

そんな師匠や親方と弟子と言う関係を、昨今の若者は敬遠する。
つらい修業より楽しい学習を選ぶ。だが、談志さんの「師匠の方が損」
というのも、言われてみれば、一理ある。日本の伝統を育てた
そんな世界に、いま赤信号が点滅してはいないだろうかと、
やきもきしている。

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