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山が襲う

なぜこうも非常なのか。と天を恨みたくなる。台風に伴う記録的
大雨により、東京・伊豆大島(大島町)で土石流が発生し、
死者と不明者が合わせて50人近い惨事となった。日々の平和を
喜びとする罪のない人ばかりだろうに。そう思うとやりきれません。

午前2~3時と言えば、たいがい安らかに寝入っている頃だ。
そこを土石流に襲われたのだから、ひとたまりもない。伊豆大島は、
火山で知られる三原山が形づくる島だ。人々は幾たびもの噴火に
苦しみながら山と共存してきた。が、長年にわたり降り積もった
火山由来の土砂は大量の雨を含み、"魔物"に変じた。


気象庁は再三、大島町に注意を喚起し、都も住民避難を提案して
いたとか。だが、町は避難勧告を出さなかった。町長も副町長も不在で、
電話連絡を受けての判断だった。町にいて雨の激しさを直接、
体感していたら、判断は違っていたかもしれない。

被害は小さくできた可能性があり、反省点は多い。この惨事を
各自治体は教訓として生かさなければならない。それが亡くなった
方々への最大の供養にもなるはずだ。

故三浦綾子さんは、小説「泥流地帯」で、1926年(大正15年)の
十勝岳噴火がもたらした火山泥流の恐ろしさを、こう描写されている。
貧しくとも誠実に暮らす農村を一瞬にして埋め尽くす山津波の猛威・・・
その非常さは何度読み返しても息が詰まる。

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